「失神」ってどんな状態?種類や原因について解説
投稿日: 2023年01月06日
突然、意識がなくなり倒れてしまう「失神」。体調不良による一時的な失神以外に、重大の病気の前兆として起こる場合もあります。今回はそんな失神について解説していきます。
失神とは
脳の血流が瞬間的に遮断されることによって、姿勢の維持ができなくなり、一過性の意識喪失発作を起こすのが「失神」です。気絶ともいいます。失神は立っているときに起こることが多く、目の前が真っ暗になる感じや、めまい感、悪心(おしん;はきけ、むかつき)などがあり、その後、顔面蒼白となって意識が喪失します。意識を失う前に前駆症状を自覚することが多く、目の前が暗くなったり、場合によっては白くなったりします。人の話し声が急に小さく聞こえたり、冷や汗をかいたり、血の気が引く感じ、気分不快、嘔気など、どれも血圧が低下した時の症状(前駆症状)です。そして、このあと意識を失います。意識を失うこと自体には自覚症状がないため、「気がつくと倒れていた」という場合が少なくありません。前駆症状に頭痛や胸痛があると、くも膜下出血、心臓病の可能性があり重症のサインです。
失神の種類
失神には次のような種類があります。
神経調節性失神
最も多い失神で、いわゆる「脳貧血」です。顔色が悪くなり、やがては座り込みます。呼びかけても反応が鈍く、マヒをおこしたり倒れたりします。意識を失うほどの強いものは、同じ姿勢で長時間立っていた時、急に立ち上がった時、睡眠不足や疲れが蓄積したときなどに起こりやすくなります。これは突然に低血圧が起こることが原因で、立位で血圧を維持するための神経反射が破たんして起こります。意識がもどるのは数十秒以内です。
不整脈が原因の失神
失神には「突然死」を起こす病気が隠れている場合もあり気をつけなくてはいけません。予兆もなく、横になっていても失神が起きる場合があります。他の原因に比べて再発率が高く、治療しないと発症者の2割程度が1年以内に死亡するという報告もあります。特に不整脈によって引き起こされ、心筋梗塞や心筋症などの可能性があります。また、ぽっくり病と呼ばれるブルガダ症候群など、突然死につながる病気の場合もあります。
脳動脈硬化症による失神
脳に血液を送る血管が動脈硬化を起こすことによる失神です。極めて稀なものですが、年間で78万人が経験すると試算されています。症状としては、めまい、ふらふら感が主なものです。鎖骨下動脈に動脈硬化症の狭窄(血管の一部が細くなっていること)があったり、頸動脈の一部に狭窄があったりすると、急に失神を起こすことがあります。つり革を持った時、後ろを振り向いたとき、下を向いたときなど、一定の姿勢で繰り返してフラッとする感じがある特徴があります。
失神の原因
失神の原因を見つけるのは簡単ではありません。失神発作の多くは一度きりなので、その場合は病気が原因とは考えにくく、自律神経反射を介するものと推測されます。逆に、くり返して失神発作が起こる時や、高血圧症、糖尿病、心臓・血管疾患、脳疾患など基礎疾患がある場合、高齢者などでは何らかの原因が推測されます。長時間の立位・座位や排尿・排便後などが誘因となり、前駆症状を伴って失神がある場合は専門医を受診する必要があります。不整脈などの心疾患、脳動脈硬化症などの脳疾患などを考慮しながら注意深く検査を進めますが、どんな場合でも、精神的ストレス、睡眠不足、過労、過度のアルコール摂取などを控えることが必要です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン