冬も侮れない脱水 適切な水分補給を心がけよう
投稿日: 2023年12月14日
夏の間は熱中症対策で水分補給をしていたけれど、寒くなってきたしそれほど積極的に水分を摂っていない、という方は多いのではないでしょうか。けれども、寒い時季も意外と脱水のリスクがあります。そこで今回は、冬の水分補給についてご紹介します。
このページの目次
「脱水」とはどんな状態?
積極的に人間の身体で水分が占める割合は、成人男性で体重の60%、女性55%、新生児75%、高齢者50%といわれています。そのおよそ3分の2が細胞の中に、残りの3分の1が血液・リンパ・唾液・細胞間質液に配分されています。体内の水分が不足することを「脱水症」と呼びます。体重の2%(50㎏で1リットル)の水分が失われると、口やのどの渇き、食欲不振など不快感に襲われます。さらに、6%以上失われると「脱水症状」に陥って死に至る場合もあります。ちなみに、食べ物を食べないと2~3週間で死に至るといわれますが、水分を1滴も摂らないとせいぜい4~5日で死んでしまうといわれます。
1日に必要な水分量
身体に必要な水分は体重約70㎏の成人男性の場合、1日の水分の出入りはおよそ2.5リットルとされています。
その内訳は次のとおりです。
入ってくる水
・食事に含まれる水分:1リットル
・たんぱく質、炭水化物、脂肪が体内で燃焼して出る水分:0.5リットル
・飲み水:1リットル
出ていく水
・呼気:0.5リットル
・皮膚からの蒸発:0.5リットル
・尿や便:1.5リットル
このように、通常ですと1日に1リットルほどの水分補給をしていれば脱水状態には陥りません。のどの渇きを覚えた時に200mlくらいを1日に5回飲めばいい計算となります。
夏だけじゃない!冬も気をつけたい脱水の要因
夏場ですと暑かったり運動で発汗を促進しているので、その分だけ余計に水分補給をしたくなります。身体が水分補給を欲しています。では、冬の場合はどうでしょうか。いくつか重要な脱水にいたる要因があります。
乾燥
外気の乾燥、エアコンや暖房の使用による室内の乾燥、住宅の密閉構造で湿度が低いなど、外的な乾燥要因が冬には発生しやすくなります。また、身体も体感温度が低くなってのどの渇きを感じにくくなったり、身体を冷やしたくなくて水分を摂らなかったりしがちになります。呼気や皮膚からの蒸発は夏場でも感じることはないので、「不感蒸泄(ふかんじょうせつ)」と呼ばれていますが、まさに、冬は脱水状態に気がつきにくくなるのです。
ウィルス感染などによる脱水
風邪やインフルエンザなどの感染症は脱水症の発症原因となります。嘔吐や下痢といった症状のせいで体液が大量に体外に排出されたり、高熱で体温調節のために発汗が促進されたりします。
アルコールによる脱水
年末年始初め、冬場は飲酒の機会も増えるかもしれません。お酒を飲むとのどが渇くことは経験されているでしょうが、アルコールには利尿作用があって、お酒を飲むと脱水状態になっていきます。お酒に水分があるから水分補給になると考えるのは間違いです。最近では、飲酒しながら水分補給をする「和らぎ水」が奨励されています。
寒い上に夏場のように汗をかかないので、タイミングがつかみにくい冬場の水分補給。夏と同じように、通常でしたら1日1リットルほどの水を、ちびちび(1回にコップ一杯半ほど)飲みましょう。ただし、夏とちがって冷たい水は身体を冷やすので、常温や白湯などがおすすめです。また、夏場のように大量に汗をかいてミネラル分を失うのとは違うので、スポーツ飲料の常飲はおすすめではありません。実は冬こそ、夏以上に意識して水分補給を心がける必要がありそうです。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン