月経痛が強い人は要注意!20~30代後半に多い子宮腺筋症について
投稿日: 2022年11月24日
20~30代後半に多い子宮腺筋症。昔は「内性子宮内膜症」と呼ばれ、「外性子宮内膜症」と呼ばれた子宮内膜症と区別されていました。子宮内膜症と同時に発症したり、子宮筋腫と合併したりすることもあります。今回は、この「子宮腺筋症」についてご紹介します。
子宮腺筋症とは
子宮内にあるべき子宮内膜が子宮壁の筋肉で腫大化(腫れたりしこりができる状態)するのが子宮腺筋症という病気です。子宮の内面を覆う子宮内膜は、プロゲステロン(=黄体ホルモン)やエストロゲン(=卵胞ホルモン)の作用によって増殖・剥離を繰り返します。剥離したときが月経ですね。でも、この子宮内膜が子宮内面だけでなく子宮の外で増殖すると、剥がれ落ちた内膜や血液には出口がありません。それが血液のかたまりとなって成長し、周囲と癒着して、いろいろな障害を起こすことになるのが子宮内膜症です。そして、何らかの原因で子宮内膜が子宮の筋肉の中に深く潜り込んでしまうことがあります。これを子宮腺筋症といい、この深さが子宮筋の厚みの80%を超えてしまうと、代表的な症状の強い月経痛を起こします。また、子宮筋層の肥大化が起こるので、子宮全体が大きくなり、同じように子宮が大きくなる子宮筋腫との鑑別が困難です。症状も似ていて30~40%ほどは合併していることもあります。
子宮腺筋症の原因
原因はハッキリとわかっていませんが、初経年齢が早くなり、逆に閉経年齢は遅くなっています。それだけ女性の身体は、女性ホルモンであるエストロゲンの影響を長く受けるということになります。さらに、結婚・妊娠・出産の年齢も遅くなっています。妊娠・授乳期には、月経が停止し、エストロゲンの働きも抑えられ、自然に子宮内膜症が治ったりしていました。子どもを多く産めばなおさらです。出産回数も少なく、また子どもをつくらない女性も増えている今、子宮内膜症や子宮腺筋症は増えているのです。それ以外にも、ストレス、身体の冷え、免疫力の低下などが影響していると考えられます。
子宮腺筋症の症状
月経時にはかなり激しい生理痛を引き起こします。下腹部に起こる痛みだけでなく、足に走る痛みや肛門にも痛みを感じることがあります。また、経血量が増え、過多月経にもなりますので貧血が起こります。そして、子宮腺筋症があると妊娠しにくく、妊娠しても流産しやすいという特徴もあります。子宮腺筋症は月日が経つとだんだん悪くなっていく病気で、治癒も難しくなってきます。早期受診、早期診断、早期治療が重要です。
病気が進行してしまうと不妊症の原因にもなり、さらに悩みが深くなります。強い生理痛、過多月経、貧血、性交痛などがある場合は、すぐに婦人科受診しましょう。今のところ子宮腺筋症の予防法はないと言われています。ですからまずは、早期発見が一番です。できるだけ早く異常をみつけて、発症してしまったときに速やかに対処することが大切です。発症した場合、結婚の有無、妊娠・出産の希望、現在の生理痛や経血量などの症状を考慮して、それぞれの患者に合わせて治療方針を決めて行きます。日常生活に支障が出るほどの生理痛や経血量ならば、思い切って受診しましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン