漢方の視点で見る「秋」の特徴と、健康・美容との関係
投稿日: 2023年10月06日
朝晩、少しずつ涼しくなり、秋の訪れを感じる季節がやってきました。1年の中でも過ごしやすく、食べ物もおいしい秋。一方でこの季節は、夏の疲れが残っていて、気温の変化も大きいため、体調を崩しやすい時季です。特にこれから秋が深まると空気も乾燥するため、お肌がカサカサになるなど、肌トラブルに悩む方も増えてくるでしょう。そんな秋の体調管理や肌の乾燥対策にはさまざまな方法がありますが、その一つに「漢方」があります。どういうことなのか、詳しく解説します。
漢方とは
漢方はかつて中国から伝えられた医学を元に、日本人に合わせて独自に発展したものです。「五行説」という古代中国で生まれた世界観では、自然と身体の状態の関係を説明しており、漢方も「人間の身体は自然の一部」という考え方が基本になっています。西洋医学は肉体に不調が起こっている原因を探し、その部分を治療するという考え方ですが、漢方は体質や生活習慣を含めた全身のバランスを見直し整えていくことを目的に使われます。また、ハーブやドクダミのように昔から身体にいいと言われてきた「民間薬」とは異なり、漢方は医学的に効果を認められた薬です。植物や鉱物など薬効成分をもった自然素材から作られる「生薬」を、多くの場合2種類以上組み合わせて作られています。
東洋医学からみる「秋」の特徴と不調の関係
「五行説」では世の中のすべてのものが「木・火・土・金・水」で構成されているとし、季節や色、邪気、臓器なども五行に分けられます。その中で「金」にあたる秋は「燥邪」の季節とされ、古代から乾燥による悪影響が人体に出やすい時季と考えられてきました。五行説で「燥邪」のダメージを受けやすいのは「肺」です。ここでいう「肺」とは、口・喉・鼻・気管支・肺という呼吸器に加え、皮膚もその一部とされています。つまり、乾燥する秋は、呼吸器系の病気にかかりやすく、皮膚の乾燥による肌トラブル、ドライアイといったさまざまな症状が起こりやすい時季と言えるのです。
秋の体調管理・美肌作りに「漢方」を取り入れてみるのもあり
漢方を使う目的の一つは、季節の変化によって崩れてしまう身体のバランスを整えることです。「肺」は呼吸だけでなく、水分の代謝や体温調節などの働きもしています。漢方の考え方では、健康な肺は体液・血液という「陰液(いんえき)」で潤うことで十分な役割を果たしますが、陰液のバランスが崩れると肺の機能が低下し、身体全体にさまざまな不調が現れてしまいます。さらに、漢方薬には数多くの種類があり、症状や体質に合わせて処方されるので、薬局などで相談しながら自分に合うものを見つけましょう。
漢方の効果を最大限に発揮させるためには、日々の生活、特に食生活を見直すことも大切です。夏バテで食事がきちんと摂れていなかったり、ストレスが溜まっていたりすると、免疫力が低下し、肺も「燥邪」の影響を受けやすくなります。漢方の考え方に近い「医食同源」を取り入れ、毎日の食事で、身体の中からも潤いを補給しましょう。たとえば、喉によいとされるのは、ごぼう・れんこん・梨・みかんなど。また、肌にいい食材としては、鶏の手羽先、軟骨、ごま、はちみつなどがあります。バランスのいい食事、運動、十分な休息といった生活の基本を見直し、必要に応じて漢方の力も借りながら、全身のバランスを整えてみてはいかがでしょうか。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン