入浴の疲労回復効果:疲れをとるためには何℃がベスト?
投稿日: 2023年08月31日
疲労回復に欠かせないお風呂。「お風呂が大好き」と言う方もいるでしょう。ただ、お風呂で疲労回復をするためには、適切な温度があります。そこで今回は、疲れをとるために最適なお風呂の温度について解説します。
このページの目次
入浴で疲れが取れる理由
入浴には、温熱作用、水圧作用、浮力作用という3つの作用があります。これらはどれも疲労回復に関係している作用です。その内容は次のようなものです。
温熱作用
温かいお湯に浸かると血管が拡張し、全身の血流がよくなります。これを温熱作用といいます。血流がよくなると、血管にたまった疲労物質や老廃物の排出が促されるため、温熱作用には疲労回復効果があるといわれます。また、血流がよくなると、疲労によってダメージを受けた細胞を修復するホルモンが全身に届きやすくなります。
水圧(静水圧)作用
お風呂に入って湯につかると、全身の表面から身体の内側に向かって水圧がかかることになります。適度な水圧はマッサージのような役割を果たし、血液の循環をよくして、疲れをとる効果が期待できます。
浮力作用
お湯に浸かっている部分には浮力が働きます。すると、ふだん使っている筋肉の緊張が軽減され、身体を休めることができます。
このように、入浴が持つ3つの作用は、いずれも疲労回復の効果が期待できるものです。ただ、温度設定を間違ってしまうと、期待するほど効果が得られなかったり、身体に負担になることもあります。そこで次に、お湯の温度と疲労回復の関係について説明していきましょう。
お湯の温度と疲労回復の関係
入浴の温熱作用で疲労回復効果が期待できると述べましたが、単純に温度を高くすれば疲労回復が促進されるわけではありません。疲労回復という点からみたときのベストな温度は37~40℃とされています。その理由として、次の3つが挙げられています。
身体への負担を少なくしながら、血流をよくすることができる
水温が35~36℃(「不感温度」という)の場合、深部体温(身体の中心部の温度)が上昇せず、血流の変化がみられないことがわかっています。そのため、低めの温度で入浴しても、疲労回復効果はあまり期待できません。一方、42℃以上の熱めのお湯に浸かると、血流はよくなりますが、血圧や心拍数が上昇するため、身体に負担がかかってしまいます。そのため、身体に負担をかけずに疲労回復をするには、37℃~40℃がベストといえるでしょう。
質の良い睡眠につながる
入眠後に深部体温が下がると、良質な睡眠をとりやすいといわれています。ちなみに、40℃のお湯に10分ほど浸かって深部体温を上げておくと、その後、深部体温が下がることがわかっています。お風呂の温度設定を調節すると、疲労回復に欠かせない良質な睡眠の確保にもつながるなんて、一石二鳥ですね。
ココロをリラックスさせることができる
37~39℃のお湯に10分以上浸かると、自律神経の1つである副交感神経が優位に働くことがわかっています。リラックス時に働く副交感神経が優位になると、筋肉が緩んで、血流が促され、疲労回復につながります。一方、41℃以上のお湯に浸かると、交感神経が優位に働きます。交感神経も自律神経の1つですが、身体を活動モードにさせる働きがあるため、かえって身体を緊張させてしまいます。朝の活動前に入る場合はともかく、睡眠前に入浴をする場合、41℃以上の熱いお湯に浸かることは入眠の妨げになる恐れがあるので、おすすめできません。
以上のことから、疲労回復を考えた時のベストな温度は、37~40℃といえるでしょう。副交感神経が優位になるといわれている温度(37~39℃)と若干の誤差がありますが、37~40℃の範囲の中で試しながら、自分にとって一番疲れがとれる温度を探してみてください。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当