自律神経のはたらきと自律神経失調症
投稿日: 2022年05月09日
最終更新日: 2022年06月06日
自律神経には「交感神経系」と「副交感神経系」があって、これらがバランスを取り合って心身の内部環境であるホメオスタシス(恒常性機能)を担っています。
交感神経は別名“活動する神経”とも呼ばれ、運動や仕事などをするときに、心臓の拍動・血圧・血糖・呼吸などの増加、ホルモン分泌の促進、皮膚の発汗、子宮の収縮などに影響します。
一方、副交感神経は“休む神経”とも呼ばれ、内臓や器官の働きをリラックスさせたり、休息や睡眠などで優位に働きます。また、消化器の働きや消化液の分泌を促進したり、排尿を促したりする働きもしています。
このように、交感神経と副交感神経とは、いわば、車の運転で喩えるとアクセルとブレーキのように相反する働きをすることによってバランスを保っています。
それが、生活習慣の乱れやストレスや疲労、あるいは体調などによってバランスが崩れることによって、さまざまな不調や病気が起こってくることがわかってきました。
たとえば、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうことで起こるのが「自律神経失調(症)」です。自律神経のバランスが崩れると、次のような多様な症状が現れます。
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全身症状
・だるさ
・疲れやすさ
・めまい
・立ちくらみ
・気が遠くなる
・食欲不振
・不眠
・微熱など
部分的症状
・頭痛、頭重感
・眼精疲労、ドライアイ
・ドライマウス
・耳鳴り、詰まった感
・のどの異物感、圧迫感、つまった感じ
・動悸、胸痛
・息が吸いにくい、苦しい、つまる感じ、過換気症状
・首や肩の凝り、痛み、背中や腰の痛み
・皮膚の乾燥、痒み、多汗
・手や腕の冷え、しびれ、痛み
・吐き気、便秘、下痢、腹部の張り
・頻尿、残尿感
・不感症、性交不快、月経痛
・足の冷え、しびれ、ほてり
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精神症状
・不安
・イライラ
・気が沈む
・記憶力低下
・注意力低下など
このように、実に多くの症状が起こってきます。また、個人によって症状の出方もさまざまで、単独で出る人もいれば、重なり合って症状が起こっている人もいます。突然現れたり消えたりすることもあります。ただし、そうした症状が何度も繰り返し起こっていることと、原因がよくわからないというのが、自律神経失調症の特徴です。たとえば、激しい運動をすると心臓の動悸が激しくなりますが、これは原因がはっきりしています。疲れた時の疲労感や、悩み事があるときの不眠や不安も同じです。このように原因がはっきりしているわけではないこと、また、病院などで検査を受けても、さまざまな器官の異常として現れるわけでもありません。ですから、自律神経失調症のさまざまな症状は「不定愁訴(ふていしゅうそ)」と呼ばれています。
コラム ~不定愁訴~
ハッキリとした原因がないのに、肩こりやめまいなど、心身の不調を訴えることを不定愁訴といいます。愁訴とは違和感を感じて表現することを指しています。いいかえると、本人だけが感じる自覚症状ともいえるので、周囲から理解されなかったり、検査をしても原因や理由がわからなかったりします。ですから、場合によっては「わがままを言っている」とか「甘えている」などの誤解をされることも少なくありません。何らかの原因が隠れている場合や自律神経が失調しているなどもありますから、つらかったり、継続して症状が続くようなら、受診をするのがおススメです。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン