夜食が習慣化している人は気をつけて!夜食症候群とは
投稿日: 2024年01月31日
夕食後、何だか小腹がすいてつい夜食に手が出てしまうことはありますよね。実は、夜遅い時間の食事や間食は、「夜食症候群」を招く可能性があります。今回はこの「夜食症候群」について解説します。
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夜食症候群とは
私たちの身体の中では、さまざまなホルモンが働いています。このようなホルモンのひとつに「レプチン」があります。レプチンは脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポサイトカイン)で、脳の視床下部に働きかけて食欲を抑えたり、エネルギー代謝を促して体重を適正に保つように働いています。このような働きから、「満腹ホルモン」とか「食欲抑制ホルモン」などとも呼ばれています。適正な食欲や体重を維持するために重要な働きを持つレプチンですが、夜遅い食事や夜食を摂ることが常態化すると、その機能が低下し、血糖値や中性脂肪が増えてしまうのです。これを「夜食症候群(Night-Eating Syndrome、NES)」と呼んでいます。
夜になるとレプチンの機能低下が起こる理由
夜食症候群になると、高血糖や高血圧、脂質機能異常などが起こりやすくなって、メタボリックシンドロームのリスクとなるため要注意です。どうして夜遅くに摂る食事がレプチンの機能を低下させるのかについては、大きく次の2つが挙げられています。
脂肪細胞の肥大化と内臓脂肪の増加により、脂肪細胞の機能異常が起こる
レプチンは脂肪細胞から分泌されています。そのため、脂肪細胞が機能異常に陥ると、レプチンの作用も異常をきたしてしまいます。脂肪細胞の機能異常が起こる理由として、脂肪細胞の肥大化、つまり、肥満が挙げられます。夜遅い食事が続き、太りやすくなると、脂肪細胞が肥大化します。レプチンは脂肪細胞の肥大化と比例して分泌量が増加します。しかし、肥満状態になると視床下部でのレプチン受容体の感受性が著しく低下して、レプチンが作用しにくくなります。また、肥満によって内臓脂肪が蓄積すると、身体に悪い影響をもたらす悪玉のアディポサイトカイン(PAI-1、TNF-α、レジスチンなど)が増加し、反対に善玉アディポサイトカインであるレプチンの作用が妨げられることもわかっています。
睡眠中に消化活動が行われ、睡眠不足を招く
睡眠不足になると、血液中のレプチン濃度が減少することがわかっています。夜遅くに食事をすると、睡眠中に消化活動が行われるようになるため、睡眠を妨げて睡眠不足を招きます。その結果、レプチンの血中濃度が減少し、夜食症候群を引き起こすと考えられています。
夜食をとらないようにするには?
このように、夜食症候群はメタボリックシンドロームのリスクにもなる怖い状態です。ですから、夜遅くに食事を摂ることは止められることをおすすめします。そうはいっても、仕事などの都合で夕食が遅くなってしまう方もいることでしょう。そのような場合は、たとえば、夕方にエネルギー源となる炭水化物を摂り、帰宅後に摂る夕食はおかずだけにするなど、食事の仕方を工夫してみましょう。そんな工夫が肥満や夜食症候群を防ぐことにつながります。また、ストレスを上手に解消することも必要です。夜食症候群が疑われる人は、そうではない人よりも仕事量が多い、集中力を必要とする仕事である、自分の仕事の量や質を決める権限がない、などの特徴があることがわかっています。このことから、仕事のストレスを夜間の食欲によって解消しているのではないか、という指摘もあります。ですから、夜食症候群を予防するためにも、自分なりのストレス発散方法を見つけてみましょう。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン