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老健で働く看護師さんが、辞めたいと感じるとき

投稿日: 2019年04月02日
最終更新日: 2024年02月21日

老健で働く看護師さんが、辞めたいと感じるとき

 
執筆:赤尾 治子(看護師)
医療監修:株式会社Mocosuku
 
 
老健(介護老人保健施設)は、医療系職種と福祉系職種が一緒に仕事をする職場環境になります。
 
未曾有の超高齢社会を進む日本において老健は重要視され、ここで働きたいと希望する看護師も増えてきました。
 
一方で、在職している看護師のなかには辞めたいと思う人もいるようです。
 
老健で働く看護師はどのようなことをきっかけに辞めたいと思うのか、また何か対策はないのか考えてみましょう。
 

 

老健の看護師が辞めたくなる理由(1)入所者家族からのクレーム対応が大変

 
患者さんを治療するという明確な目的が示されている病院では、治療や処置のミスなどは重大な事象ですが、日常的な細かいやりとりに対してクレームを言う家族は比較的少ないと思います。
 
対して老健は、医学的管理のもと看護・介護を行う施設です。
 
日常生活(食事、入浴、排泄など)におけるケアや入所者への対応いかんによってはクレームにつながることがあります。
 
たとえば、自宅から持参した下着や衣類を紛失した、着替えの際に衣類が破れた、家族が指定した衣類を着せていなかったなど、ささいな出来事から感情的になり関係が悪化してしまうのです。
 
そして実際には、衣類の紛失は家族の勘違い、衣服の破れは何回も洗濯してもともと生地が弱っていた、指定と違う衣服を着せていたのは拘縮(こうしゅく:関節可動域制限)の程度によってサイズが合わなかった…など、やむを得ない事情によることもあります。
 
老健に長く入所していると、入所当時と比べて本人の体型や状態も変わってくるものですが、家族は在宅で看ていたときと同じように考える傾向があります。
 
寝たきりが続けばリハビリをしていても拘縮は進みますし、骨ももろくなります。
 
拘縮が強くなった方への着替えは困難で、無理をすれば骨折につながりかねません。
 
ですから、本人の様子や変化に応じた対処法については、家族にも逐一報告したほうが、誤解が生じることを防げます。
 
家族への日常報告を適切に行い、現在の状態を知ってもらったうえで一回り大きい衣服を選んでもらうなど、日ごろから家族とコミュニケーションを図ることが大切です。
 
在宅で長期間介護をしている家族は、入所中も自宅と同等のケアを望み、オムツの当て方から口腔ケアの方法まで事細かに指示するようなケースも見受けられます。
 
 
【対策】
 
こうした家族への対応が煩雑に感じられて意欲が低下してしまうと、やがては辞めたくなるかもしれません。
 
しかしながら、家族との関わりを敬遠していると、ますます意思疎通が難しくなって業務に支障が出るなど悪循環に陥るばかりです。
 
家族とは信頼関係の構築が要です。
 
訴えが多い家族ほど、日ごろから世間話などをして頻繁に接する機会を持つことが、トラブルを回避する方法といえるでしょう。
 
 

老健の看護師が辞めたくなる理由(2)介護士さんとの人間関係が大変

 
病院では医師や看護師、看護助手、検査技師、薬剤師など、さまざまな医療職が患者さんの治療やケアに従事しており、看護師の同僚もたくさんいます。
 
一方、介護も重要な要素である老健では介護職員が多く、病院とは違って看護師はむしろ少数派です。
 
そのせいか、高齢者施設では介護士と看護師の対立、という構図もよく聞きます。
 
お互いに相手を理解しようとせず日常的に会話も少ないと、一方通行の視点になりやすく相手への批判にもつながりかねません。
 
介護士と看護師など職種間の溝が深く、対立構造になっていてギスギスした雰囲気の職場だと、人間関係が原因で辞めたくなるかもしれません。
 
 
【対策】
 
このようなケースでは、まずは誤解やすれ違いを解消する術を模索して、試してみましょう。
 
そもそも、介護士は生活の視点から、看護師は医療の視点から入所者を見るものですが、これは専門分野が違う以上当然のことです。
 
たとえば入所者が発熱したとき、介護士は食事や排せつ、着替えのなど生活の場面におけるケアを想定します。
 
一方看護師は、バイタルチェックや症状の観察、既往歴、検査データなどから発熱の原因を推測しつつケアを行い、医師に報告をします。
 
入所者にとって、双方の意見や見方の対立などは関係なく、どちらの視点も必要としています。
 
一番の重要ポイントは、老健に入所している高齢者が安心して安全にケアを受けられることなのです。
 
この目的さえぶれなければ、介護士も看護師も各々専門職としての知識や技術を生かして、入所者に対するよりよいケアの実現に邁進するだけです。
 
介護職と看護職の分け隔てなく、お互いに日ごろから頻繁に会話を交わすこと、時にはケアの目的をチーム内で説明して共有することが大切です。
 
こちらの意図は伝わっているはずという過信や、逆に相手のことをわかったつもりになっているかもしれません。
 
他職種のスタッフ間で、お互いの疑問点や意見を率直に言い合える関係が築けると理想的ですね。
 
 

老健の看護師が辞めたくなる理由(3)医師が不在になる休日・夜間の責任が重い

 
老健にもよりますが、休日や夜間は当直の医師が不在という施設も多く、その間に入所者の容態が急変するなどの事態が生じた際は、看護師に対応が任せられます。
 
実際のところ、入所者は自分の身体に何かしら異変が起こっても、的確に説明できないという問題があります。
 
なかには会話もままならない方もいますから、痛みや苦しさを自分では訴えられない、ということも多いのです。
 
このような入所者に対しては、介護士や看護師が普段と違う様子をできるだけ早く察知することが大切です。
 
そして、家族への連絡や、救急車を呼んで付き添う、といった局面を想定し、入所者の日ごろの様子や急変時の様子をよく観察し、時系列に説明できるようにしておく必要もあります。
 
このような対応をスムーズに行うにはある程度の経験を要しますから、病院勤務で培ったスキルが活きる機会も多いと思います。
 
しかしながら、急変時の対処が苦手という看護師にとっては、老健で担う責任が重すぎて辞めたいと思うかもしれません。
 
 
【対策】
 
医師の不在時や緊急時の対応に不安がある人は、老健の管理者が教育をしてくれる場合もありますし、手順書に従い緊急時を想定したシミュレーションをするなど、不安を払拭する工夫をしてみましょう。
 
また、いざというときに備え、日ごろから入所者の様子を観察し、把握していることが大切ですので、既往歴などもしっかりと頭に入れておきましょう。
 
 

老健の看護師が辞めたくなる理由(4)看護業務のほかに介護業務もあって大変

 
ひと口に老健といっても、認知症の方を受け入れている施設、療養病床を持っている施設などさまざまです。
 
施設によっては、看護師の業務のなかにオムツ交換や入浴介助、食事介助なども含まれます。
 
そうした介護業務に追われ、本来の看護業務が思うようにできない環境だと、これは自分のやりたいことではない…と感じて辞めたくなるかもしれません。
 
 
【対策】
 
確かに、オムツ交換や入浴介助は介護職の仕事のようにも思えます。
 
しかしながら、入所者の病歴などを把握したうえで皮膚の状態を観察し、褥瘡のリスクや湿疹の状態などを確認するには、看護師の視点が必要です。
 
食事介助も同様に、食事量だけではなく、嚥下機能や口腔内の状態などの観察も伴うため、やはり看護師の視点が重要です。
 
このように、介護業務と思われるケアも、看護師目線で捉えてみると、単なる生活介助にとどまらない仕事としての意義が見えてくるのではないでしょうか。
 
 

老健の看護師が辞めたくなる理由(5)入退所の回転が早く一人ひとりの入所者にじっくり向きあえない

 
老健施設は、病院を退院してもすぐに在宅に戻れない方を対象とし、医療的な管理のもとリハビリなどを行いながらケアをする施設です。
 
基本的に在宅に戻るまでの期間を過ごす施設ですから、入所期間は原則3か月です。
 
状況によっては延期されるケースはあるものの、特養や有料老人ホームのような「終の棲家」とは位置づけが異なります。
 
また、ショートステイやレスパイトといった1~2週間の入所も扱っているので、比較的頻繁に入退所が起こります。
 
その都度インテークを行って、入所中の説明や物品の確認、管理などの業務が発生しますので、煩雑になりがちです。
 
一人ひとりの入所者にじっくり向き合う機会もなく退所を迎えてしまう…そのようなことが繰り返されると、入所者との関わりを重んじている看護師は進退について考えてしまうかもしれません。
 
 
【対策】
 
確かに、老健は一人ひとりの方を最期まで見届ける施設ではありませんが、リハビリをしながら在宅復帰に向けて頑張っている入所者をサポートし、時には一緒に一喜一憂しながら、症状が回復して無事に帰宅する姿をみることができます。
 
その方のケアを日々行っている看護師にとって、こうした喜びは大きなやりがいになると思います。
 
 

「やっぱり老健で働くのは無理」そう思ったときは

 
ここまで老健の看護師が辞めたくなる理由と、それぞれの対策をご紹介してきました。ただそれでも、現在の老健で働き続けるのはどうしても難しい、と判断せざるを得ない人もいると思います。
 
あるいは、老健での業務を覚えて多くの入所者を看護するなかで、物足りなさや自分が目指すケアや看護との違いを感じるかもしれません。
 
そのようなケースでは、転職も視野に入れて検討しましょう。
 
たとえば、緊急時の医師不在に馴染めない人は、休日夜間を問わず医師が常駐している大学病院などは候補のひとつですし、当直の医師がいる、もしくは病院が併設されている老健を探す方法もあります。
 
一度老健で勤務したことによって、施設の位置づけや業務内容などは理解していますから、別の老健に転職する際に確認すべき事項もわかるはずです。
 
また、介護業務に時間を割くのではなく看護師本来の業務を追求したいという人は、高齢者施設以外の一般病院が候補になるでしょう。
 
別の高齢者施設を考えている場合は、看護師としての業務内容は事前に確認する方がベターです。
 
高齢者施設でも介護の業務は介護職だけが行う、という施設は多いです。
 
そして、めまぐるしく入退所を繰り返す職場環境にやりがいを見いだせない人は、最後までじっくり向き合える特養や有料老人ホームが転職先の候補に挙げられます。
 
 
高齢者施設は種類も豊富で、同じ老健であっても受け入れる入所者や勤務体制などによりさまざまな点で違いがあります。
 
自分の優先事項を明確化し、それに合った病院や施設を見極めることが大切です。
 
 

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老健で働く看護師さんが辞めたいと感じるとき:まとめ

 

  • 入所者家族からのクレームに適切な対処をするためには、日ごろからのコミュニケーションが大切
  •  

  • 同じ入所者であっても看護職と介護職ではケアの視点が違うことを受け入れ、対立するのではなく入所者の安全を第一に考え、お互いに相手の専門を理解するように心がける
  •  

  • 休日や夜間に医師が不在の老健では、入所者の急変時は看護師が対応するので、日ごろから入所者の容態とリスクを把握しておく必要がある
  •  

  • 看護師が看護業務のほかに介護業務を行う施設もあるが、その場合は看護師の視点から介護業務を捉えるとよい
  •  

  • 老健は入退所の回転が早いが、在宅に向けて頑張っている方々に寄り添うことが喜びにつながる
  •  

  • 高齢者施設の種類は豊富で、施設によって勤務体制や業務内容も違うので、転職の際は自分が優先させたい事項をよく考えて決める

 
こちらの記事もぜひご覧ください。
看護師を辞めたい理由とは?
 
 
<執筆者プロフィール>
赤尾 治子(あかお・はるこ)
横浜市大医学部病院で14年間、介護老人保健施設で6年間の勤務を経て、株式会社とらうべ入社。現在は学校や企業の保健業務、介護施設の紹介、医療記事の執筆を担当。介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格を取得予定
 
<監修者プロフィール>
株式会社 Mocosuku
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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