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看護の現場で起こるパワハラ… 対策はどうすれば?

投稿日: 2019年01月30日
最終更新日: 2024年02月21日

看護の現場で起こるパワハラ… 対策はどうすれば?

 
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
“嫌がらせ”や“いじめ”を意味する「ハラスメント:harassment 」。
 
セクハラ・モラハラ・マタハラ・アカハラなど、最近では多様な種類のハラスメントが指摘されています。
 
ここでは、パワーハラスメント(パワハラ)に焦点を絞って、看護師へのパワハラについてまとめてみました。
 

 

看護におけるパワハラとは

 
日本看護協会は、『職場のハラスメント対策』において看護の現場で起こる可能性のあるハラスメントを
「他者に対して行われる言動が、その意図にかかわらず相手を不快な思いにさせる、不利益を与える、尊厳を傷つける、不安や脅威に陥れるような場合のこと」
と定義しています。
 
パワハラについては、厚生労働省の「職場のパワーハラスメント」の定義を採用し、
「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」
としています。
 
具体的には次の6類型が示されています。
 
●身体的な攻撃:暴行や傷害
 
●精神的攻撃:強迫や名誉棄損、侮辱やひどい暴言
 
●人間関係からの切り離し:隔離や仲間はずし、無視
 
●過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
 
●過小な要求:業務上の合理性はなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
 
●個の侵害:私的なことに過度に立ち入ること
 
 

看護におけるパワハラの実態

 
2017年に発表された日本医労連による『看護職員の労働実態調査報告結果』では、約3万3000人の回答者のうち、4人に1人に当たる28.9%が「パワハラを受けたことがある」と答えています。
 
ちなみに、2017年に厚生労働省が発表した他の職業を含むパワハラの実態調査では、「過去3年間にパワハラを受けたことがある」と回答した人は32.5%でした。
 
次に、誰から受けたパワハラであったか見てみると、上位から順に次のとおりです。
 
●看護部の上司:57.9%
●医師:41.2%
●同僚:18.4%
●患者:17.0%
●家族:5.1%
●その他:2.9%
●回答なし:0.9%
 
1位の「上司からのパワハラ」に関しては、年代が若いほど「パワハラを受けた」と回答している人数は多くなっています。
 
このような結果を受けて日本医労連は、上司による若い看護師へのパワハラが離職理由になっている可能性を指摘し、事業所全体の問題としてパワハラ問題に取り組む必要があると結論づけています。
 
 
次に訪問看護師へのパワハラについては、その実態解明を目的に兵庫県で実施した調査・分析が出版されています。
 
83施設・600名の看護職を対象に質問紙調査を行い、返信のあった358名のデータを分析した結果、50.3%の看護師が利用者やその家族・親族からパワハラを受けたことがあると回答しました。
 
身体的暴力と精神的暴力の双方で多岐にわたっていること、パワハラの行為者は訪問看護のサービスを受ける利用者本人が多かったこと、また、およそ4分の1は家族によるものだったことが明らかにされています。
 
先述の病院における調査では、上司・先輩や医師といった医療職からのパワハラが多いのに対して、訪問看護の場合は利用者やその家族からパワハラ行為を受けることが多いのが特徴的です。
 
しかも、パワハラへの対処として最も多かったのは、「相手の言い分をただただ傾聴する」でした。
 
「がまんやあきらめといった対処も少なくなかった」という実態も報告されています。
 
 

看護におけるパワハラの複雑さ

 
日本看護協会は医療・介護現場におけるハラスメントについて、次のような特殊性を指摘しています。
 
*職場の直接の上司や同僚以外にさまざまな関与者がいる可能性があること:医師や薬剤師など他職種、出入り業者などの第三者、患者や家族など
 
*看護師がハラスメントを受けても看護師個人の問題とされ十分な対応がとられてこなかったこと
 
*救急時や急変時のハラスメントに対して、安全管理上の問題と見なされ、ハラスメントとして問題にされにくい実情があること
 
たとえば、患者からハラスメントを受けても、同僚や先輩などから「それは、あなたの接し方がよくなかったからではないか」と言われることがあります。
 
患者の言動よりもむしろ、看護師の振る舞いが問題視されてしまうケースが少なからず起こっているのです。
 
患者からのハラスメントを「一次被害」だとすると、同僚や先輩からこのようにあしらわれることは「二次被害」とも言えるでしょう。
 
さらにそこから当該看護師が「本来のケアを提供できず、委縮してミスが増え、体調を崩す」ような、事態の悪化につながる点も懸念されるところです。
 
看護に限らず、一般的にその言動がパワハラなのか指導なのかという明確な線引きは困難です。
 
どこまでが指導として許されるのか、組織全体としてはっきりさせ、メンバーに周知させていく取り組みが求められます。
 
 

パワハラを受けたときの対策

 
日本看護協会「職場のハラスメント対策」のサイト『職場のハラスメント対策』では、「深刻なハラスメントが職場で起こっても、その後、組織内で取り組みを行っているところは少ない」と述べられています。
 
まずは病院などが、組織全体としてハラスメント対策に取り組んでいくことが大前提です。
 
そのうえで、もしあなたがパワハラと思われる言動に遭ったときには、次のような対応を取るように薦められています。
 
 
●どのようなことをされたのか記録する
 
「いつ・どこで・誰に・何を・何のために」といった項目について、できるだけ具体的にメモや録音などで残してください。
後々事実確認をする際重要になってきます。
 
 
●周囲に相談する
 
前述した訪問看護の調査では、「何もしなかった」「あきらめた」という対応が少なからずあったとのこと。
しかし、それでは一向に問題は解決しません。
 
同僚や上司に相談する、また、施設にハラスメントに対応する組織などがあればそのシステムを利用しましょう。
 
さらに、働く人のメンタルヘルスをサポートするサービス、EAP(従業員支援プログラム:Employee Assistance Program)などを導入している施設もあります。
ハラスメントにより精神的なダメージを受けている場合などは、カウンセリングを受けることができます。
 
 
●外部窓口に相談する
 
施設内に相談窓口がなければ、外部の相談窓口を利用するという選択肢もあります。
 
厚生労働省が運営する『明るい職場応援団』では、職場のパワハラ問題の予防・解決に向けさまざまな情報を発信しています。
サイト内には相談窓口も設けられていますので、覚えておきましょう。
 
 
このように、独りで悩みを抱えていないで相談をする、公にする、という行動がとても大切です。
 
 
もちろん、繰り返して言いますが、まずは各職場においてハラスメントに対する組織的な対策を施すことが急がれるべきでしょう。
 
どのような行為がハラスメントに該当するのか明確にし、組織の側も働く人の側も共通の認識として理解することが大切です。
 
そして、万一パワハラが起こったときは、独りで悩まず相談することを定着させる必要があります。
 
場合によっては、パワハラが労働災害に認定されるケースも発生しています。
 
このような過程を経て問題の解決に至れば幸いですが、そうはいかないケースも少なくありません。
 
次の段階として、職場の異動や転職を検討することも考えられます。
 
 

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看護現場のパワハラ:まとめ

 

  • パワハラには「身体的な攻撃・精神的攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害」の6類型があるとされる
  •  

  • 2017年の調査結果によると、看護師の4人に一人がパワハラを受けたことがあると答えている
  •  

  • パワハラの主体は、1位が看護部の上司、2位が医師である
  •  

  • 訪問看護師は、利用者本人や家族からパワハラを受けることが多い
  •  

  • パワハラに対して我慢したりあきらめたりしている看護師は多い
  •  

  • 医療・介護現場でのパワハラの特徴は、加害者の職種や立場がさまざまであること、看護師個人の問題とされがちなこと、救急時は安全管理上の問題とされてしまうことなどが挙げられる
  •  

  • 病院などの施設側がハラスメントの対策組織をつくることが求められる
  •  

  • パワハラを受けたときの対処としては、どんなことをされたのか記録を残す、周囲や外部窓口に相談するなどして、独りで抱え込まないことが大事である

 
こちらの記事もぜひご覧ください。
看護師を辞めたい理由とは?
 
 
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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