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看護師に対するマタハラ。 マタハラを受けた時の対処法は?

投稿日: 2019年02月01日
最終更新日: 2024年02月21日

 
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
数あるハラスメントのなかでも、マタハラは医療や看護の現場でもっとも軽視されているハラスメントと言えるかもしれません。
 
深刻な人手不足が慢性化している医療現場では、他職種よりも悲惨なハラスメントが起こっている可能性もあります。
 
妊娠・出産・育児は、病気ではないという理由から、多くの看護師が出勤を強いられています。
 
医療職だからこそ、この問題を真剣に考えて、マタハラへの理解を深めてほしいと思います。
 

 

マタハラの基本情報

 
マタハラはマタニティハラスメント(maternity harassment)の略語です。
 
この用語は、2013年5月に日本労働組合総連合会(連合)が実施した「マタニティハラスメント(マタハラ)に関する意識調査」がきっかけで広まったとされ、それまではパワハラやセクハラに包含されているハラスメントでした。
 
マタハラに該当するのは、たとえば、上司に妊娠の報告をしたら退職を促されたとか、育児のために時短勤務をしている人に対して、周囲が「自分たちの仕事が増えて迷惑!」などと非難する行為などです。
 
働く女性が妊娠・出産・育児に関して職場で受ける様々な不当な扱い、嫌がらせ、解雇や雇止め、自主退職の強要などの不利益を指しています。
 
2014年のいわゆる「マタハラ最高裁判決」では、妊娠による体調不良が原因の異動で病院が管理職の女性を降格したのは、男女雇用機会均等法でいう不利益取扱いに当たるという判決が下されました。
 
連合の調査によると、2013年には6.1%であった「マタハラ」という用語の認知度は、2015年には93.6%にまで達しています。
 
しかしながら、認知度が大幅に上がっている一方で、実際に被害を受けているのは正規雇用で34.9%、非正規雇用で24.4%、「状況の変化を感じない」と回答している人が63.5%にも及んでいます。
 
2015年には「女性活躍推進法」が成立し、マタハラが行われた企業名などが公表されるようになりました。
 
この年の厚生労働省の調査結果では、正社員の5人に一人、派遣社員の2人に一人がマタハラ被害を受けたと回答しています。
 
2017年には「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」にマタハラ防止のための措置義務が課されることが明記されました。
 
 

マタハラの種類

 
NPO法人マタハラNetによると、マタハラには次の4つのタイプがあるとして類型化されています。
 
○ いじめ型
「迷惑なんだけど」「妊婦は休めていいね」「やる気あるの」など、同僚の怒りが組織ではなく妊婦や経産婦に向けられる
 
○ 追い出し型
「残業ができないとほかの人に迷惑」「妊婦を雇う余裕はない」など、労働から排除されてしまう。泣き寝入りしてしまう場合の多いタイプ
 
○ パワハラ型
「定時で帰る正社員はいらない」「妊婦でも甘えは許さない」など、妊娠・育児を理由にした時短や休業を許さず、労働を強要する
 
○ 昭和の価値観押しつけ型
「子どものことを一番に考えなさい」「旦那の稼ぎがあるからいいじゃないか」「君の身体のことを心配しているんだ」など、性別役割分業の考え方を押しつける
 
 

看護とマタハラ

 
2015年に実施された連合の「働く女性の妊娠に関する調査」によると、会社側に妊娠報告をした932名のうち、34.5%が「妊娠を職場に報告するのにためらいがあった」と答えています。
 
また、看護師に行った同様の調査では、どんな理由であれ「ためらいがあった」と答えている割合は66%にものぼります。
 
妊娠を報告しにくいのは、医療現場における慢性的な人手不足に加え、妊娠は病気ではない、自分の妊娠によって周囲に迷惑がかかる…といった意識が働くからと考えられます。
 
医療現場の古くからの体質や価値観が強く影響しているのでしょう。
 
「看護職員の労働実態調査報告書」では、「危ぶまれる母性」と題して調査結果が報告されています。
 
それによると、看護職員の3人に一人が切迫流(早)産、1割が流産していると指摘されています。
 
また、他の職種の女性労働者と比較すると、看護職員の妊娠時異常の割合が高いという結果も出ています。
 
さらに、つわり休暇や夜勤免除など、妊娠時の支援措置が極めて劣悪であることも数値化されています。
 
ちなみに、この調査で「一番辛いと感じていた業務は」という質問には、1位が「夜勤や準夜勤」、2位が「立ち仕事」となっています。
 
業務についたら、多少お腹が痛くても「抜けるわけにはいかない」という気持ちが働いて我慢してしまい、結果として切迫流早産や流産の多さにつながっている現状が垣間見えます。
 
妊娠時の看護婦にとって、病院勤務での看護業務が過酷な労働環境であることは否めません。
 
その結果、業務上支障が出るという理由で、妊娠・出産した看護師を退職に追い込むといった事例もいまだに多いのです。
 
 

古い病院の体質がマタハラにつながる

 
看護師の世界はマタハラが多いといわれています。
 
旧態依然とした病院がいまだに多いことが要因の一つと言えるでしょう。
 
マタハラの多い病院には、次のような傾向が見受けられます。
 
・子どもができたら、仕事を辞めるのが当然
・出産直前まで働くのは当たり前
・昔はつわりがひどくても出産直前まで仕事をしていた
 
このような思考を上層部がもっていると、管理職や一般のスタッフも当たり前のように同じことを口にしてしまうようです。
 
加害者側がこうした考え方をマタハラであるとか、ましてや「悪意」があるとは思っていない構図が問題をより複雑化しています。
 
そして、妊娠・出産・育児をする被害者は、自分が不利な条件下にあるとみなして泣き寝入りをするケースが多いため表面に出にくいという悪循環が生まれるのです。
 
そもそもハラスメントは、加害者の意図とは関係ありません。
 
その言動によって相手(被害者)が不快や脅威を感じれば、ハラスメントなのです。
 
加害者側のわざとではない、そんなつもりではない…などの申し開きは、自らを正当化する理由にはなりません。
 
ハラスメントの基本的な概念が十分に浸透していないと言えるでしょう。
 
相手が「嫌だ」「不快だ」と思ったら、それはハラスメントにあたるのだ、という認識を徹底する必要があります。
 
 

パタニティハラスメント

 
2017年の雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は7.5%となっています。
 
年々割合は上昇しているものの、諸外国と比べると極端に低いと評されています。
 
その原因の一つに「パタニティハラスメント(パタハラ)」が挙げられています。
 
「父親の育児休業などありえない」「キャリアに傷がつく」「育休で休むような奴はいらない」といった古い価値観によって、実際に解雇にいたるような事例も示されているほどです。
 
妊娠・出産・育児は母親だけの問題ではなく父親も参加していく時代であると、「働き方改革」においても提言されています。
 
日本看護協会も「職場のハラスメント」のサイトでこの問題に触れ、連合による調査結果などを示しながら、パタハラをマタハラの男性版として問題視しています。
 
 

マタハラを受けないために

 
それでは、マタハラを受けないようにするために、看護師はどのような対策や対応をしていけばよいでしょうか。
 
ここでは2つのことを提案します。
 
 
〇 労働制度の基礎知識を知る
 
<妊娠期~産後1年間>
時間外労働や深夜業務ができない場合は、申請・請求によって制限を受けることができる。
また、有休のほかに妊婦検診のための時間を確保する、医師の指導のもと時差出勤をするなど、申し出ることで請求可能
 
<産前6週間、産後8週間>
全ての女性(パート・アルバイトを含む)が休業を取得できる
 
<産後>
育児休業は、一定要件を満たせばパート・アルバイトでも取得可能
 
<その他取得できる制度>
育休・産休期間の社会保険料負担免除、時短制度による一日原則6時間にできる制度、時間外労働制限、夜勤の免除など
 
 
〇 病院の選別
 
マタハラを受けないためには、病院を選ぶ必要もあります。
 
・産休・育休をとった看護師の数
・現在、産休・育休中の看護師の有無
・看護師の年齢構成
・時短勤務看護師の数
・託児所の有無
 
このような情報をリサーチして、病院選びの判断材料にすることも一案です。
 
なかには、出産後は契約社員へ変更と規定している病院もあるようですから注意しましょう。
 
実際に産休・育休をとった先輩看護師と話ができれば一番安心です。
 
入職に当たっては、そのような機会をお願いしてもよいと思います。
 
また、看護部長や看護師長などの上司に理解があるかどうかも大事な要素です。
 
上司が結婚して子育てを経験している人かどうかも確認したいポイントです。
 
 

被害者だけではなく加害者にもならないように!

 
深刻な人員不足を抱え、毎日のようにハードワークに追い立てられている医療や看護の現状を鑑みると、知らず知らずのうちに加害者の立場にまわってしまうことも懸念されます。
 
実はマタハラの加害者には女性も多く、看護の場においても、長時間労働や深夜残業の多い職場などがその温床となっているとも言われています。
 
2013年以降、さまざまな取組みが展開されてきてはいますが、「マタハラについて日本はまだ後進国」という意識をもって、組織も個人もこの問題を真剣に考えていかなくてはなりません。
 
 

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看護師に対するマタハラ:まとめ

 

  • 人手不足が続く医療・看護現場ではマタハラが深刻
  •  

  • 妊娠を報告したら退職を促された、出産や育児で時短・休業をとったら周囲に「迷惑」と言われた、などがマタハラにあたる
  •  

  • 「マタハラ」という言葉の認知度は90%以上であるが、依然として被害を受けている人は多い
  •  

  • マタハラの種類には「いじめ型」「追い出し型」「パワハラ型」「昭和の価値観押しつけ型」などがある
  •  

  • 妊娠を職場に報告するのにためらいがあったという看護師は66%にのぼる
  •  

  • 看護職員は他の職種の女性労働者に比べ妊娠時異常の割合が高いとされ、3人に一人が切迫流(早)産、1割が流産している
  •  

  • 過酷な労働条件が看護師の妊婦にとって大きな負担になっている
  •  

  • とくに上層部に古い体質が温存されていると、マタハラ被害も増える
  •  

  • マタハラは、その言動をした人の意図とは関係なく、相手が不快や脅威を感じたかどうかで決まる
  •  

  • 男性が育児休業をとることに関する「パタニティハラスメント」も最近は問題視されている
  •  

  • 看護師がマタハラを受けないようにするためには、労働環境の基礎知識を知ること、妊娠・出産・育児に理解のある病院を選ぶことが大事
  •  

  • 深刻な人員不足と激務に追い立てられて、無意識のうちに自分が加害者にならないよう注意が必要

 
こちらの記事もぜひご覧ください。
看護師を辞めたい理由とは?
 
 
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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