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看護師のキャリアアップにつながる資格: 保健師

投稿日: 2019年08月27日
最終更新日: 2023年11月27日

看護師のキャリアアップにつながる資格: 保健師

 
執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
病気の予防や健康増進を軸に、幅広い世代の健康な生活をサポートする保健師
 
そのニーズは高まっていて志望者は増加傾向にあり、スキルアップとして保健師を目指す看護師も増えています。
 
保健師とはどのような資格なのか、また、資格取得の方法などについてご説明します。
 

 

保健師の役割

 
公衆衛生の理念に基づき、赤ちゃんから高齢者まであらゆる年代の人々の健康増進、生活の質の向上を目指してさまざまな支援を行う保健師。
 
その源流は明治時代に遡り、日本に蔓延した結核患者の訪問活動にあるといわれています。
 
前身とされる巡回看護婦や学校看護婦から、「保健婦」、「保健師」へと名称を変え、現在は地域で生活する人々のニーズに合わせた幅広い活動を担うようになりました。
 
保健師のサポート範囲は、家庭訪問など対個人的なアプローチから、町や事業所、学校など一定の集団への働きかけにまで広がっています。
 
 

保健師が活躍するフィールド

 
保健師資格誕生の背景から察せられるように、保健師の職場で最も多いのは都道府県や市町村などの地方自治体で、およそ7割の保健師が保健所や保健センターなどで働いています。
 
保健所ではより広域的かつ専門的な対応が求められ、各市町村や病院などとの連携、調整といった役割を担います。
 
市町村の保健センターでは、住民の具体的な生活状況や健康問題を把握し、子育て支援、生活習慣病予防、健康診断や予防接種の推進などに携わります。
 
さらに、保健師が活躍する場はこれだけに留まりません。
 
病院や診療所で働く保健師も増えていて、退院に向けた支援や健康診断の実施、保健指導などを行っています。
 
また、産業保健師として企業で働く人の健康を支援する、あるいは地域包括センター、児童福祉施設など福祉分野で活動する、保育所、訪問看護ステーション、学校などの教育機関で健康管理を行う、といったように、保健師の職場は時代のニーズとともに多彩な広がりを見せています。
 
 

保健師という資格の性質

 
保健師の資格は「保健師助産師看護師法」において、「名称独占」と規定されています。
 
看護師の資格は「業務独占」であり、その業務には有資格者でなければ従事することはできません。
 
一方、保健師の業務に該当する健康相談や保健指導などは、看護師や栄養士など他の資格を持つ人、あるいは資格を持たない人が行ったとしても問題はありません。
 
ただし、無資格の人が「保健師」と名乗ることはできず、違反すると罰せられます。
 
保健師の名称をもって健康相談や保健指導にあたる場合、相談者や対象となる人が安心して心を開いてくれる可能性があります。
 
裏を返すと、保健師の肩書きで働く以上は、そうした信頼に応えられるような専門性と責任が求められる、ということでしょう。
 
 

保健師の資格を取得する方法

 
日本で保健師になるには、国家試験にパスすることが必要ですが、看護師免許の取得が大前提です。
 
大学の看護系学部で保健師になるための学科、もしくは、4年制の看護学校で「保健師・看護師統合カリキュラム」などを専攻している場合は、卒業(見込みを含む)と同時に看護師と保健師、双方の国家試験受験資格が得られます。
 
ただし、保健師の国家試験をパスしていても、看護師国家試験が不合格であれば保健師免許は得られない点は注意してください。
 
3年制の看護短期大学や看護師養成所などを卒業して、既に看護師免許を取得している場合は、保健師養成学校または短期大学専攻科などで1年以上学ぶと、保健師国家試験を受験することができます。
 
また、3年制の看護短期大学に通っているケースで、看護系大学の3年時に編入するか、大学院で保健師養成過程を学ぶという選択肢もあります。
 
保健師国家試験は年1回、例年2月に行われます。
 
合格率は80〜90%で、看護師国家試験と比較すると難易度はやや高くなっています。
 
 

保健師の資格取得に向けて学ぶ内容

 
保健師を目指す人が勉強する内容の核となるのは「公衆衛生看護学」です。
 
まずはその土台となる概念や理念を学び、臨地実習などを通して公衆衛生看護の現実について理解を深めていきます。
 
保健所や保健センターなどの現場で保健師が活動する際、最も重要な要素は「地域診断」です。
 
地域診断とは、家庭訪問や健康相談などによって住民の健康状態や生活環境、社会福祉サービスなどの実態について情報を収集して地域の健康課題を分析し、結果に見合った支援を検討することです。
 
保健師の養成施設では、この「地域診断」を実践していくための力を養います。
 
また、災害時や感染症集団発生時の保健活動といった健康危機管理、産業保健や学校保健における活動の基本、疫学や保健統計学、保健医療福祉行政の仕組みなども学びます。
 
すべての世代、多様なライフステージにある人を支援できるように、豊富な知識を身につけていく必要があります。
 
具体的な支援方法は、対個人の面談や電話支援から、集団を対象とした健康教育などさまざまです。
 
さらに、個人・集団に応じた支援のあり方を判断するなかで、関連する他職種との連携方法を習得することも大切です。
 
保健師養成学校や大学のカリキュラムでは、講義だけではなく演習や実習を通して、地域社会で広く貢献できる力を養っていきます。
 
 

看護師業務にも役立つ保健師資格

 
現在看護師として働いている人にとっても、保健師の資格は大きな強みになります。
 
たとえば、一般的な入院病棟で看護の対象となる人は常に「入院患者」ですが、多くの患者にとって入院生活は一時的なものです。
 
本来の生活は退院後の自宅や住んでいる地域にありますので、保健師の知識を備えていると患者の日常生活をより具体的にイメージできます。
 
その患者に必要な支援を入院中から考慮して、介護福祉施設や保健センターなど関係機関とスムーズに連携する、といったメリットが生まれることも期待できます。
 
また、病院や診療所のみならず、訪問看護や介護福祉施設、企業の健康管理室、教育機関などの職場で勤務する看護師にとっても、公衆衛生看護学を基盤とした保健師の視点は必要不可欠です。
 
地域看護学は看護師になるための教育課程でも学びますが、保健師の資格を目指してより深い知識を得ることは、看護師のキャリアを積む過程で大きな助けとなるでしょう。
 
 

保健師資格の有無による給与の違い

 
さて、看護師もしくは保健師として就労する際、多少ならずとも気になるのは、資格の有無による給与の違いではないでしょうか。
 
たとえば、病院の地域連携を担当する部署や訪問看護の部門などに、保健師の肩書きで就職する場合は、初任給に新卒看護師の給与1年分が上乗せされる、といったケースが多いようです。
 
もちろん、職場によって給与形態が異なりますので一概には言えません。
 
また、保健師の就労場所のなかで最も多い、県や政令指定都市の保健所、市町村の保健センターなどで働く場合は、地方公務員上級職の採用試験を受験する必要があります。
 
給与は自治体にもよりますが、基本的に公務員上級職の給与に相当します。
 
このほか、企業の健康管理室などで働く産業保健師の給与は、その会社の給与規定や就労条件などによって変わってくるでしょう。
 
看護師と比較すると、夜勤手当や残業手当などが手厚い病院であれば、経験年数は同じくらいでも保健師の年収の方が低い、という現象は珍しくありません。
 
一方、看護師から保健師に転職した場合は、前職の実務経験や年齢、キャリアが評価され、給与に反映される可能性があります。
 
そのほか、各種手当やボーナスの有無なども年収に大きく関わってきますので、給与に関しては千差万別です。
 
保健師としての就労を考えるときは、給与形態はもちろん、評価方法や勤務条件などをしっかり把握しておくことをおすすめします。
 
 

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看護師のキャリアアップにつながる資格:保健師:まとめ

 

  • 保健師は公衆衛生の理念に基づき、幅広い世代に対して健康に関わる支援を行う
  •  

  • 保健師の就労場所のおよそ7割は、保健所や保健センターである
  •  

  • 病院や企業、介護福祉施設など、保健師の活躍する場は多様化している
  •  

  • 保健師の資格は「名称独占」と規定され、無資格の人が保健師を名乗ることはできない
  •  

  • 保健師の資格を得るためには、看護師の資格を持っていることが大前提である
  •  

  • 必要なカリキュラムを学んだ上で、国家試験に合格すると保健師の資格を得られる
  •  

  • 保健師になるには、公衆衛生看護学を基盤にさまざまな知識を身につける必要がある
  •  

  • 保健師資格とその知識は、どのようなフィールドで活動する看護師の業務にも役立つ
  •  

  • 保健師資格による給与の差は職場によって異なるので、就労先の給与形態などを把握しておくことが大切である

 
【参考】監修:山崎京子鈴木るり子/共著:標美奈子 堀篭ちづ子『保健師・養護教諭になるには』(ぺりかん社 2017年)
 
 
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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