人混みに出かけると体調不良に・・・「人酔い」の原因と対策
投稿日: 2023年07月25日
仕事帰りや休日に人混みにでかけると、気分が悪くなってしまった経験のある人はいませんか?いわゆる「人酔い」と呼ばれるものですが、何が原因なのでしょうか?対策とあわせて解説します。
人酔いの原因
人混みで気分が悪くなる、いわゆる「人酔い」は、医学的に定義されている症状ではありません。このため一言ではいえない部分もありますが、「血管迷走神経反射(けっかんめいそうしんけいはんしゃ)」がその原因だという見方があります。血管迷走神経反射とは、簡単にいうと「自律神経」の切り替えが乱れること。自律神経には、血圧や心拍数を上げて身体を活動的にする「交感神経」と、血圧や心拍数を下げて身体を沈静させる「副交感神経」の2つがあります。ふだん、私たちは活動するときには「交感神経」を働かせ、休んだりリラックスしたりするときに「副交感神経」を働かせます。ところが、本来「交感神経」を働かせなければいけないときに、何らかの理由で「副交感神経」が優位に働いてしまうことがあるのです。すると、急激に血管が拡張して血圧が下がることで気分が悪くなり、めまいや吐き気、頭痛などが起こり、時に失神することもあります。
小学校や中学校の集会で時々、倒れてしまう人がいますが、あれは、まさにこの血管迷走神経反射のせいなのです。血管迷走神経反射が起こる原因は、おもにストレスだと言われています。
人酔い対策
人酔いを予防するには「自分にとってストレスになる状況を避ける」ことが重要になります。つまり、人酔いをする人はストレスとなる人混みに行かないのがベスト・・・。ですが、そうはいかない場合もあるでしょう。そういう時は、少しでも気分が悪くなりそうだと感じたら、すぐに人混みから離れて休みましょう。また、あなたのように、普段から人酔いしやすいという自覚がある人は、症状がなくてもこまめに休憩をとるのがおすすめです。
では、休むといっても具体的にはどうしたらいいのでしょうか?一番いいのは、身体を横にして休むことなのですが、外出先などではそうはいきません。たとえば、初詣などで長時間外にいる場合は、カフェなど室内に入って座ってお茶を飲むのが有効です。逆に店やショッピングモールなどの屋内にいる場合は、外に出て新鮮な空気を吸うと効果的。血管迷走神経反射による症状は、少し休めば予防や回復可能なので、とにかく気分を変えてひと息つくことが大切です。
また、周囲の温度が高いほど血管迷走神経反射が起こりやすいという説もあるので、暑いと感じたらコートや上着を脱ぎましょう。人混みに行く日は温度調節しやすい服装をし、冷たい飲み物を持って出かけるとベストといえます。こまめな休憩や温度調節を心がければ、混んでいる場所ももう怖くありません。もちろん、一緒に行く人には、「私は人混みで気分が悪くなりやすいんです」と話して協力してもらう必要があるでしょう。本格的に気分が悪くなったら相手に迷惑をかけてしまうので、大ごとになる前に、「ちょっとお茶飲まない?」や「座って休んでもいいかな」など、自分のほうから提案することも大事です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン