拒食症が女性に多いのはナゼ?
投稿日: 2023年08月10日
10代~20代の若い女性に多いといわれている拒食症。では、それはどうしてなのでしょうか。今回は、拒食症とはどういう病気なのか、なぜ若い女性に多いのかについて取り上げていきます。
拒食症とは
激しい運動や必要以上のカロリー制限によって低体重(標準体重の80%以下)を引き起こす病気です。また、拒食症は食事のとり方などに問題がある摂食障害のひとつで、大きく2つのタイプに分けられます。
- 摂食制限型・・・過度な運動と徹底的な食事制限によって低体重になるタイプ
- 過食・排出型・・・過食(むちゃ食い)をしつつも、体重増加を防ぐための代償行動を行うことで低体重になるタイプ
拒食症の原因
拒食症はダイエットをきっかけに発症することが多いといわれています。とはいっても、ダイエットに挑戦した人がすべて拒食症を発症するわけではありません。拒食症を発症しやすい要因がいくつかあるところに、ダイエットというきっかけが加わることで発症するのです。そのひとつの要因に挙げられるのが本人の性格傾向です。負けず嫌い、完璧主義、「こうであるべき」思考、物事の白黒をはっきりさせたい白黒思考、自分に厳しいストイックな性格などが指摘されています。
また、拒食症患者は自己評価が低い人が多いといわれています。このほか拒食症の発症に関係している要因として、家庭環境や母親との関係性も指摘されることがあります。
拒食症が若い女性に多い理由
さらに、拒食症に大きな影響を与えている要因がもう1つあります。それが、「やせることは良いこと」という社会風潮です。拒食症は患者の男女比率が1:20と圧倒的に女性の患者が多い病気ですが、このことと、社会風潮には大きな関係があるといえます。
1960年代ころより、アメリカでは「やせていることは自己管理ができていること」という風潮が広まりました。この風潮は日本にも影響を与え、現在でも「やせていることは良いこと」というムードがとくに若い女性の間で広がっています。実際、雑誌やテレビなどで取り上げられる女性はやせている女性が多く、若い女性の憧れの対象になっていますね。
最近では、ぽっちゃり体型の女性がモデルをする雑誌なども増えていますが、それでも「やせたい」という女性が多いのが現実です。そして、この社会風潮は拒食症の発症に大きく関係しています。
先ほどお話したように拒食症を発症する患者の中には自己評価が低い人が多く見られます。このような性格傾向を持つ人がやせて周りから「やせて、きれいになったね」などと言われると、どうなるでしょう。「やせることは人から認められること」と認識されてしまい、ダイエットを加速させたり、ひいては拒食症を発症させるきっかけにもなります。
拒食症は身体をむしばむことも
拒食症は、カラダにも異常をきたす病気です。とくに、低栄養状態によって徐脈(脈が遅くなる)や低体温、低血圧、運動障害や意識障害がといった症状が現れることがあり、この状態が悪化すると、死に至ることもあります。ですから、拒食症は決して看過できない病気なのです。また、女性の場合、女性ホルモンのバランスが乱れて月経不順になったり、骨粗鬆症を合併することがあります。この状態を放っておくと、将来的な不妊のリスクにもつながるため、早期の治療が必要です。女性の中には、「やせたい」という気持ちから日々ダイエットに励んでいる方が多くいることでしょう。でも、そのダイエットは本当に自分を美しくするものなのか、健康にするものなのか、ぜひもう一度考えてみてください。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン