夏の水分補給は何を飲むかが重要!気をつけたい「ペットボトル症候群」とは
投稿日: 2023年06月30日
暑くなると冷たい飲み物をペットボトルでゴクゴク飲む機会も増えるでしょう。たしかに水分補給は重要ですが、飲み物の中身によっては健康に支障をきたす原因にもなります。たとえば、「ペットボトル症候群」もその一つですが、どのような状態を指すものなのでしょうか?そこで今回はこの「ペットボトル症候群」について解説します。
ペットボトル症候群とは
ペットボトル症候群とは、ペットボトルなどで糖質が多く含まれる飲料を大量に飲み続けることで起こる症状のことです。1992年に日本糖尿病学会で報告されました。正式には「清涼飲料水ケトーシス」と呼ばれています。
「ケトーシス」とは体内に大量のケトン体が蓄積されることをいいます。つまり、ペットボトル症候群は、糖質を多く含む清涼飲料水を大量に飲み続けることで、身体にケトン体がたくさんたまり不調をきたしている状態なのです。では、なぜ糖質をたくさん摂るとケトン体が溜まってしまうのでしょうか。ヒトは糖質を摂取すると血糖値が上がります。すると、身体は膵臓からインスリンを分泌して血糖値を元に戻そうと働きます。インスリンには、ブドウ糖を細胞内に取り込み、エネルギーに変換する働きがあります。糖質の摂取量が多い状態が続くと、インスリンの働きが間に合わなくなり、ブドウ糖からエネルギーを作り出すことができなくなってしまいます。すると、身体は脂肪を分解してエネルギーを作り出そうとします。この過程で肝臓で作られるのがケトン体です。ケトン体は脳のエネルギー源となるなど身体にとって必要な働きをしています。しかし、体液を酸性に傾かせる作用もあります。そのため、ケトン体が大量に蓄積されると、体液のpH(水素イオン濃度)が変わって、さまざまな症状を引き起こしてしまうのです。
ペットボトル症候群の症状
ペットボトル症候群では、次のような症状が現れます。
のどの渇き、多尿
血糖値が急激に高くなると、その濃度を薄めようと、水分を欲するようになります。そのためノドが渇くことがあります。また、このときにさらに水分を摂ることで、多尿の症状も現れます。
だるさ、イライラ
血糖値が急激に上昇し、インスリンが大量に分泌されることで低血糖状態になることがあります。すると、だるさやイライラなどの症状が現れます。
意識障害
ケトーシス状態が悪化すると、血液や体液がさらに酸性に傾きます。そして、血液が酸性に傾くと、血液中の赤血球と酸素が結合しにくくなるため、脳や全身に十分な酸素を届けられなくなります。その結果、意識障害が起こります。
ペットボトル症候群を予防するには
ペットボトル症候群を予防するためには、やはり飲み物の選択がカギとなります。コーラやジュースにはおよそ10%の糖質(500mlの場合はおよそ50g)、スポーツドリンクにはおよそ5~6%の糖質(500mlの場合はおよそ25g)が含まれています。これに対して、砂糖・果糖・ぶどう糖などの吸収されやすい糖類の1日あたりの摂取量目安はおおよそ25gです(WHO基準)。食事や間食にも糖質は含まれるため、水分補給をするときは水やお茶を選ぶようにしましょう。フレーバー入りの無糖炭酸水もおすすめです。運動時や熱中症対策でのスポーツドリンクは2~3倍に薄めたり、どうしても甘いものを飲みたいときは、成分表示を確認し、できるだけ糖質が少ないものを選ぶ癖をつけましょう。
ペットボトル症候群の患者は10~30代の男性に多いことがわかっています。ただ、これに該当しないからといってリスクがないわけではありません。夏になると冷たくて甘い食べ物や飲み物につい手を伸ばしてしまいたくなりますが、自分の身体のためにも飲み物選びを見直してみてください。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当