需要が増している「助産師」求人の実態と仕事内容
投稿日: 2019年12月03日
最終更新日: 2023年11月27日
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社Mocosuku
助産師の職場といえば、多くの人が病院や助産所をイメージするでしょう。
しかし昨今、助産師の活躍の場は拡がっており、行政や企業などで病院以外の場所で働く助産師も増えてきています。
そこで、病院・クリニックはもちろん、医療機関以外の職場も含めた助産師の求人の現状と内容について、詳しくご紹介します。
このページの目次
助産師の活躍の場は多岐にわたる
はじめに、現役の助産師たちがどのような場所で活躍しているのか、統計を参考に見てみましょう。
日本看護協会の『看護統計資料』によると、助産師(40,632人)の職場として最も多いのは病院(60.8%)でした(令和元年)。
次いで診療所(24.5%)、助産所(5.6%)、看護師等学校養成所・研究機関(3.8%)、市町村(3.5%)、保健所(0.9%)、社会福祉施設(27人)、事業所(26人)、都道府県(25人)、その他(0.5%)という結果でした。
冒頭で触れたイメージのとおり、大半の助産師が病院や診療所(クリニック)、助産所で働いていることが分かります。
一方で、割合こそ少ないものの、教育機関や行政機関、民間企業などに勤務する助産師もいて、活躍の場は広範囲であることも推測できます。
次項では、それぞれの職場における仕事内容、実際の求人についてご説明します。
助産師の求人:病院、クリニック(診療所)
現役助産師の8割以上が働く病院やクリニック。
産婦人科では、お母さんが安心して妊娠期を過ごして無事に出産できるように、妊婦の健康管理、母親学級や両親学級の開催、分娩など、助産師はさまざまな業務に携わります。
産後は新生児指導、母乳指導など、赤ちゃんやお母さんの健康を守るためのケアに従事します。
実際の求人情報を見ると、お産を取り扱っているか、外来のみか、病床数や規模など、医療機関によって特色は異なり、仕事内容は多種多様です。
たとえば、助産師が妊婦健診を行う助産師外来のある病院、更年期や不妊治療のサポートや相談などに対応している病院もあります。
こうした病院では、お産以外の業務を行う部署に配属される可能性も考えられます。
また、勤務体系も勤務先によって大きく変わります。
夜勤の有無、雇用形態(正社員かパートか)など、自分のライフスタイルに合わせて、勤務先を選ぶことができそうです。
助産師の求人:助産所
助産師は、正常分娩であれば産婦人科医がいなくても分娩を介助してよいとされていますので、助産所を開業している助産師もいます。
助産所は、家屋が建物を兼ねているケースも多く、病院より温かい雰囲気を持った施設もたくさんあります。
また、分娩はもちろん、妊婦や母子のケア、乳房ケア、アロマテラピーマッサージ、妊婦や母子を対象とした各種教室の開催など、特徴的なサービスを行っている助産所も多数見受けられます。
なかには、自宅での分娩をサポートする出張助産所を開設している助産師もあり、より地域に密着した独自のサービスを提供できる点も助産所の魅力の一つでしょう。
助産所は個人の開業が多いせいか、求人サイトなどで大々的な募集を見かける機会は少ないと思います。
各助産所のホームページなどで募集していることもありますので、情報収集の際はチェックしてみてください。
助産師の求人:看護師等学校養成所・研究機関など
看護専門学校や看護系の大学など、教育機関の助産師求人もよく見かけます。
こうした機関では、おもに看護師や助産師を志望する学生たちを対象に、講義や演習などで指導する講師を募集しています。
各機関によりますが、専任講師のほか、実習だけを担当する非常勤講師など、雇用形態はもとより担当する授業や契約期間もさまざまです。
講師の仕事に興味がある人は、まずは求人情報をチェックしてみてください。
ただし、講師の求人はほとんどの場合、3~5年以上の臨床経験や看護教員の研修修了などが応募の条件になっています。
助産師の求人:行政機関
都道府県や市町村の行政機関、保健所などで働く助産師もいます。
その地域で親子が安心して生活できるように、母子健康手帳の交付、自宅訪問、育児相談、乳幼児健診、身体測定、育児講座の開催などの業務に携わるほか、それらにまつわる事務作業も発生します。
行政機関で働く助産師は公務員という立場になり、待遇面などは他の公務員と同等で、土日祝日休みという求人も多いです。
しかし、それだけ重責を担う仕事と言えます。
また、自治体によっては、助産師という名目の募集でも、対象は高齢者という仕事内容もありますので、応募の際は求人情報をしっかりと確認するようにしましょう。
助産師の求人:民間企業
育児相談や産後ケアサービスの事業を行っている民間企業のなかには、助産師を募集している企業もあります。
ただし、求人数はかなり少なく、雇用形態もパートやアルバイトなど、正社員とは限りません。
しかし、民間企業でお勤めを経験したい人や、病院とは一味違う視点から女性の一生や母子のケアに携わりたいという人は、チャレンジしてみるのも一つの方法だと思います。
助産師の求人:国際組織
青年海外協力隊(JICA)や国境なき医師団、NGO組織など、日本を飛び出して海外で活躍する助産師もいます。
言語や文化が全く異なる環境で業務に従事するのは、大変な苦労をともないます。
その一方で、海外だからこそ得られる数多くの貴重な経験もあるでしょう。
具体的な求人に関しては、定期的に募集を行っている団体もありますが、一概には言えません。
国際組織での業務に関心を持っている人は、各組織のホームページなどを確認してみてください。
このように助産師は、病院以外にも幅広いフィールドでその活躍が期待されています。
ですから、より一層キャリアアップしたいという人は、病院やクリニックだけではなく、前項を参考に広い視野で求人情報を見ると、新たな発見につながるかもしれません。
ただし、求人内容の資格欄に「助産師」と記載されていても、勤務先は訪問看護ステーションや保育園、老人ホームなど、妊娠や出産、育児と直接的に関係ない施設であるケースも見受けられます。
もちろん、助産師の経験がこれらの業務に役立つことも多いのですが、「母子のケアをしたかったのに、違う部署に配属されてしまった」という状況に陥らないように、あらかじめ仕事内容はしっかりと把握しておきましょう。
助産師という職業を見据え就職や転職を検討している人は、自分が目指す助産師のあり方、経験を積みたいフィールド、将来のキャリア形成などをしっかり考えてから、求職活動をはじめるとよいでしょう。
需要が増している「助産師」求人の実態と仕事内容:まとめ
- 現役助産師の職場は病院や診療所が80%を超えるが、助産所や教育機関、行政機関、民間企業で働く助産師もいる
- 病院では妊娠、出産、育児にまつわる業務に携わるが、分娩の有無、入院施設の有無、病床数など、医療機関によって特徴が異なるため、助産師に求められる業務も一様ではない
- 勤務体系も病院によってさまざまであり、ライフスタイルに合わせた働き方を選ぶことも可能である
- 助産師は正常分娩であれば医師なしで分娩介助ができるため、助産所を開く助産師もいる
- 特徴的なサービスや地域密着のサービスを提供できることも、助産所の魅力の一つである
- 助産所の求人は病院に比べると少ないが、それぞれの助産所のホームページで募集している場合もある
- 看護専門学校や看護系大学など、教育機関でも講師職として助産師を募集している場合がある
- 講師の募集は、ほとんどの場合、一定期間以上の臨床経験や特定の研修の修了が要件となる
- 行政機関では、親子が地域で安心して暮らせるように、さまざまな業務に従事する
- 行政機関で働く助産師の立場は公務員であり、給料や休日なども他の公務員と同等であることが多い
- 育児相談や産後ケアサービスなどの事業を行っている民間企業が、助産師を募集することもある
- 国際組織などに所属し、海外で活躍する助産師もいる
- 助産師は幅広い分野でニーズが高まってきているので、キャリアアップを目指す人は、視野を拡げて求人を探すと新しい発見につながるかもしれない
- 求人のなかには、資格欄に「助産師」と記載されていても、仕事内容は妊娠や出産などと直接関係ない案件も見受けられるので、しっかりと確認した方がよい
- 就職や転職を検討している人は、理想とする助産師像やキャリア形成についてよく考えてから、求職活動をはじめるとよい
<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師。国立大学病院産婦人科での経験後、株式会社とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー
<監修者プロフィール>
株式会社 Mocosuku
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供