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在宅医療の中核を担う「訪問看護ステーション」の役割と課題

投稿日: 2019年11月15日
最終更新日: 2024年02月21日

在宅医療の中核を担う「訪問看護ステーション」の役割と課題

 
執筆:赤尾 治子(看護師・認知症ライフパートナー3級)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
看護師が患者の生活の場に出向いて、医師の指示書をもとに看護ケアを行う「訪問看護」
 
障害や病気を持つ人が、住みなれた地域で自分らしく自立して療養生活ができるようにサポートすることを目的としています。
 
そして、訪問看護師の活動拠点となる施設が訪問看護ステーションです。
 
地域医療、在宅医療の要(かなめ)ともいえる訪問看護ステーションとは、どのような場所なのでしょうか。
 
訪問看護師の仕事とあわせて、詳しくご紹介します。
 

 

訪問看護ステーションとは?

 
訪問看護ステーションは、自宅で安心して療養生活が送れるように、看護師が医師や他の医療専門職、ケアマネージャーなどと連携し、訪問看護サービスを提供するための事業所で、在宅医療には欠かせません。
 
訪問看護ステーションに所属しているのは、看護師や准看護師のほか、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などです。
 
 

訪問看護ステーション:訪問看護の利用者と費用

 
訪問看護の対象者は、「介護保険を利用する高齢者」というイメージが強いかもしれません。
 
しかし、病気や障害を持っていて訪問看護を必要とする人であれば、乳児から高齢者まで、年齢に関係なく利用することができます。
 
また、医療保険と介護保険の両方に対応している点も訪問看護の特徴といえます。
 
費用は利用する保険、サービスの内容、自己負担の割合などによって変わります。
 
訪問看護を受けたい人は、かかりつけ医、ケアマネージャー、近隣の地域包括支援センター、訪問看護ステーションなどに相談するところからスタートします。
 
 

訪問看護ステーションの役割:利用者や家族の精神的な支え

 
病院に入院しているときは24時間医師が常駐していて、何かあればすぐに診てもらうことができます。
 
しかし、在宅療養ではそうはいきません。
 
ですから、在宅医療を受けている利用者やその家族は、常に「急に症状が悪化したり具合が悪くなったりしたらどうしようか」「体調がすぐれないが大丈夫だろうか」といった不安を抱えています。
 
訪問看護ステーションでは、緊急時に電話で相談を受けると、定期的な訪問以外にも自宅を訪問して利用者の容態を確認し、都度対応します。
 
その際、医師への相談が必要と判断すれば指示を仰ぎ、容態によっては救急要請などを行います。
 
また、入院が必要になった時は病院と連絡をとり、患者や家族と病院との橋渡しをします。
 
訪問看護ステーションによっては24時間緊急対応をしているところもあります。
 
このような理由から、訪問看護ステーションは看護サービスだけではなく、利用者や家族の精神的な支えにもなっている場所といえます。
 
 

訪問看護ステーション:訪問看護師の仕事

 
訪問看護を行うためには、主治医からの訪問看護指示書が必要になります。
 
訪問看護師は、医師としっかり連携をとりながら、次のような業務に従事します。
 
●体温や脈拍、血圧の測定といったバイタルチェックや病状の観察
 
●在宅療養上の世話:清拭、洗髪、入浴介助、食事や排せつなどの介助、本人や家族などへの指導
 
●医師の指示による医療処置:点滴、インシュリン注射、胃ろうや経鼻による経管栄養の注入、管理、在宅酸素、人工呼吸器の管理など
 
 
ほかにも、褥瘡予防やその指導、褥瘡や創傷の処置、認知症、精神疾患のケア、家族の相談、健康管理、低栄養や運動機能の低下防止などの介護予防、家族への介護支援、介護相談、拘縮予防・運動機能の回復・嚥下機能訓練といった自宅でのリハビリテーション、終末期のターミナルケアなど、訪問看護師の仕事は多岐にわたります。
 
訪問看護ステーションに、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士が所属していれば、リハビリテーションはそれぞれの専門職が行います。
 
なお、薬の相談や指導、残薬の確認なども訪問看護師の仕事に含まれますが、最近では、薬局から薬剤師が訪問して利用者に説明するという運用も増えています。
 
 

訪問看護ステーションで行われる仕事

 
訪問看護ステーションは、病院であればナースステーションに相当する場所です。
 
ですから、利用者の訪問記録やサマリーといった書類作成業務、利用者の情報共有を図るためのカンファレンス、スタッフ同士のミーティング、他職種との連絡などが行われます。
 
在宅療養においては、他職種との連携が欠かせません。
 
訪問看護ステーションに所属していない医師、薬剤師、ケアマネージャーなどとも頻繁に連絡をとり、利用者の情報共有に努めなければなりません。
 
 

訪問看護ステーション:国が目指す「地域包括ケアシステム」

 
団塊の世代が75歳以上となる2025年が迫る中、これまでのように「最期は病院に入院して看取ってもらう」ということが難しくなってきています。
 
そこで政府が整備を進めているのが「地域包括ケアシステム」という体制づくりです。
 
これは、重度の要介護状態になっても住みなれた場所で自分らしく最後まで過ごせるように、「住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される」サービスの構築を意図しています。
 
これによって、がんの末期、脳血管疾患で後遺症を持つ人、認知症高齢者、神経難病患者なども、最後まで自宅で暮らせるような社会を目指しているのです。
 
 

今後さらに需要が高まる訪問看護ステーション

 
一方で、現実には家族の支えだけで在宅の介護を行うのは多大な困難が伴います。
 
その理由の一つに、利用者の重度化・多様化・複雑化が進んでいる実態があります。
 
〇重度化
 
がん末期患者や人工呼吸器の装着者、チューブ類を使用して生活する人など、医療ニーズの高い人が増えています。
 
 
〇多様化
 
重度の障害を持つ小児や精神障害を持つ在宅生活者、認知症の人などさまざまな利用者が増えているほか、人生の最期は在宅で過ごしたいと希望する利用者も増加しています。
 
 
〇複雑化
 
一人暮らしや高齢者世帯、老々介護、認認介護など、家族だけで介護を行うことが難しく、複雑な問題を抱える利用者が少なくありません。
 
 
このように訪問看護の利用者にさまざまな変化が見られるなか、地域包括ケアシステムの実現には、訪問看護ステーションの存在が必要不可欠といえるでしょう。
 
また、今後は一人暮らし世帯の増加も見込まれますので、在宅での看取りや緩和ケアにも対応可能な訪問看護ステーションへのニーズは、なお一層高くなることが予想されます。
 
 

訪問看護ステーション:今後の課題

 
お伝えしてきたように、地域包括システムを推進し、今後の日本の医療と介護を支えるために、訪問看護ステーションは非常に重要な役割を担っています。
 
実際こうした社会的背景を受け、訪問看護ステーションや訪問看護師の数は増加しています。
 
しかしながら、現状は依然として不足しており、人員の確保は今後の大きな課題といえるでしょう。
 
 
需要はますます拡大すると予測される訪問看護師の仕事。
 
看護師としてキャリアアップを目指している人は、訪問看護師という選択肢も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
 
 

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在宅医療の中核を担う「訪問護ステーション」の役割と課題:まとめ

 

  • 訪問看護の目的は、障害や病気を持つ人が、住みなれた地域で自分らしく自立して療養生活ができるようにサポートすることである
  •  

  • 訪問看護では、看護師などが患者の生活の場を訪問して看護ケアを行う。訪問看護ステーションは、その活動拠点となる
  •  

  • 訪問看護ステーションでは、看護師が医師や医療専門職、ケアマネージャーなどと連携して訪問看護を行う
  •  

  • 訪問看護ステーションには、看護師、准看護師、保健師、助産師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが所属している
  •  

  • 訪問看護は、病気や障害を持っていて訪問看護を必要とする人であれば、年齢に関係なく利用できる
  •  

  • 訪問看護は、医療保険と介護保険の両方に対応していて、実際の費用は保険やサービス内容で変わる
  •  

  • 常に医師や医療職がいる病院とは違い、在宅生活では利用者や家族はいつも不安を抱えている
  •  

  • 緊急時には利用者から電話で相談を受け、自宅訪問や容態確認など、臨機応変に対応する
  •  

  • 利用者が入院する場合は、訪問看護師が対象者や家族と病院との橋渡しを行う
  •  

  • 利用者や家族にとって、訪問看護ステーションは精神的な支えでもある
  •  

  • 訪問看護師は、医師と連携をとりながら、バイタルチェックや病状の確認、在宅療養における世話、医師からの指示による医療処置、そのほか必要なケアや相談対応、リハビリテーションなどの仕事を行っている
  •  

  • 訪問看護ステーションは、病院のナースステーションに相当し、書類作成やカンファレンス、ミーティング、連絡調整などが行われている
  •  

  • 国は地域包括ケアシステムの整備を進めており、重度な要介護状態の人でも最後まで自宅で生活できるような体制づくりを目指している
  •  

  • 在宅介護を家族の支えだけで維持することは難しく、その理由として利用者の重度化・多様化・複雑化が挙げられる
  •  

  • 訪問看護の利用者も変わってきているため、訪問看護ステーションのニーズはますます高まっていくことが予想される
  •  

  • 訪問看護ステーションや訪問看護師の数は、依然として不足している現状があり、人員の確保は今後の大きな課題といえる

 
こちらの記事もぜひご覧ください。
需要が高まる「訪問看護」の仕事内容とは
 
 
<執筆者プロフィール>
赤尾 治子(あかお・はるこ)
横浜市大医学部病院に14年間勤務。介護老人保健施設に6年間勤務。株式会社 とらうべ ではお客様相談室特別対応、学校や企業の保健業務、介護施設紹介などの業務を担当
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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