看護師の給料は高い? データで比較、看護師の給料事情
投稿日: 2019年01月23日
最終更新日: 2024年02月20日
執筆:赤尾治子(看護師・認知症ライフパートナー3級)
医療監修:株式会社とらうべ
一般に看護師の給料は高いと言われていますが、実際のところどうなのでしょう?
看護師の仕事はたいてい夜勤が伴い、さまざまな疾患や重症患者を看ることも多く、慎重な対応を求められる職場です。
肉体的にも精神的にもかなりハードですから、確かに同年代の一般職と比較すると高額なことが多いでしょう。
このページの目次
多職種との比較
看護師の約9割は女性です。
他の職種に就いている女性と比べて、看護師の給料はどれくらいなのでしょうか。
厚生労働省が調査したデータ(※)によると、女性の職種別平均給与額は以下のとおりです。
<職種> <平均年齢> <平均給与額>
看護師 39.4歳 326,275円
薬剤師 36.6歳 357,850円
航空機客室乗務員 30.8歳 306,300円
理学療法士・作業療法士 31.3歳 273,200円
歯科衛生士 34.4歳 259,325円
栄養士 34.4歳 239,000円
保育士 35.3歳 227,800円
理容・美容師 30.5歳 224,275円
※厚生労働省『平成27年賃金構造基本統計調査』
やはり、女性の他の職種と比較しても給与は高いことがわかります。
ただし、看護師の給料には、夜勤手当をはじめとした各種手当の額も含まれています。
次項からは、勤務する施設の種類や規模、年齢、資格の有無などによって、看護師の給与がどれくらい変わってくるか見ていきましょう。
施設による比較
以下に示すデータの「給料」には、扶養手当、時間外勤務手当、役職手当、通勤手当など、職員に支払われたすべての額が含まれます。
また、ここでいう「看護職員」には、保健師、助産師、看護師、准看護師が含まれます。
一般病院はご覧の通り、社会保険関係法人を含む公的な病院は報酬が高めです。
●一般病院の看護職員
<給料> <ボーナス> <年収>
国立病院 334,482円 1,065,826円 5,079,607円
公立病院 360,883円 1,170,197円 5,500,787円
公的病院 332,413円 1,082,819円 5,071,775円
社会保険関係法人 341,723円 1,141,542円 5,242,213円
医療法人 300,859円 764,089円 4,374,399円
その他 317,863円 963,912円 4,778,265円
個人 290,779円 613,672円 4,103,025円
全体 300,035円 1,004,688円 4,965,106円
●一般診療所:入院診療収益のある診療所
*入院患者がいるため夜勤が発生、夜勤手当の分比較的給料は高め
<給料> <ボーナス> <年収>
個人 261,306円 643,041円 3,778,708円
医療法人 279,063円 585,318円 3,934,076円
その他 319,022円 982,464円 4,810,727円
全体 275,846円 622,325円 3,932,481円
●一般診療所:入院診療収益がない診療所
<給料> <ボーナス> <年収>
個人 230,031円 563,685円 3,324,052円
医療法人 258,995円 658,014円 3,765,957円
その他 337,885円 953,266円 5,007,883円
全体 249,908円 629,346円 3,628,239円
※厚生労働省『第20回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告(平成27年実施)』
病院の規模による比較
以下は、病院の規模別に看護師の平均給与額を比較したデータです。
●規模1,000人以上
<年齢> <勤続年数> <給与額> <賞与等>
看護師 35.1歳 8.0年 344,800円 915,600円
准看護師 48.3歳 12.8年 296,800円 682,500円
●規模100人~999人
<年齢> <勤続年数> <給与額> <賞与等>
看護師 40.4歳 7.5年 324,700円 747,100円
准看護師 48.9歳 11.6年 284,700円 669,600円
●規模10~99人
<年齢> <勤続年数> <給与額> <賞与等>
看護師 47.8歳 9.1年 318,500円 638,800円
准看護師 49.5歳 11.4年 276,700円 624,300円
※厚生労働省『平成29年賃金構造基本統計調査』
一般に、夜勤がないクリニックより、夜勤があって規模が大きい病院の病棟勤務の年収は高めです。
病院だけで見た場合も、やはり規模が大きいほうが給与も賞与も高めです。
しかし、個々に見てみると、小さい病院やクリニックのなかにも高給なところがあります。
小規模の病院や美容外科のクリニックなどは、需要の高さから給与が高めになる傾向があるようです。
ただし、院長の方針や考え方が、働くスタッフに直接影響を及ぼしますので、それに共感できるかどうかが働くうえで大きなポイントになるでしょう。
年齢による比較
男女の看護師では、男性のほうがやや給料が高い傾向にあるようですが、それは精神科などの特殊な病棟や病院に勤務する人がいること、結婚して扶養手当がつくことが関係するかもしれません。
しかし、看護師は圧倒的に女性が多い職場なので、他の職業と比較して給料における男女差はほとんどありません。
年齢別に算出した平均支給額は以下のとおりです。
<年齢> <給与月額>
20~23歳 293,161円
24~27歳 318,167円
28~31歳 333,213円
32~35歳 345,624円
36~39歳 352,523円
40~43歳 366,407円
44~47歳 376,506円
48~51歳 389,087円
52~55歳 378,909円
56歳~ 389,871円
※人事院『民間給与の実態(平成27年職種別民間給与実態調査の結果)』
この給与には残業代や夜勤手当が含まれています。
個別に見ると、夜勤回数によって給料の額は人それぞれ違ってきます。
就職や転職をする際は、全体の給与額ではなく基本給をチェックしましょう。
基本給は昇給や賞与、退職金を計算する元となる基本賃金です。
残業や夜勤が多く手当もきちんと支給される病院や病棟では、給料は高くなりますがプライベートの時間は大きく削られてしまいます。
多忙を極め余暇を楽しむ暇がなければ、結果的にお金は溜まるかもしれませんが、そのようなペースで仕事と生活を継続するのは心身ともに厳しいものです。
体力のある若いときは、お金を貯めるためと割り切ってそんな生活も可能かもしれません。
しかし、長い目で見ると、ワーク・ライフ・バランスが整った、自分に合った職場を見つける方がよいように思います。
基本給以外の手当について
基本給以外に、地域手当、住宅手当、診療科手当、夜勤手当、役職手当などの各種手当が支給されますが、これらは病院によって金額が違います。
●地域手当
「平成29年国家公務員給与等実態調査」(※)によりますと、国家公務員として働く看護職員の地域手当の平均は1万7,082円となっていますが、地域によって違います。
賃金水準が高いのは東京都の特別区(23区)で、この区域の地方公務員が最も多く地域手当をもらっています。
その他にも大阪府や横浜市、名古屋市、さいたま市といった大都市において地域手当が多く支給されています。
基本的に、物価が高い地域では地域手当の支給額も高いようです。
●住宅手当
住宅手当も病院によってさまざまです。
「平成29年国家公務員給与等実態調査」(※)によりますと、国家公務員として働く看護職員の住居手当の平均は5,180円ですが、民間の病院では数万円というところもあります。
●夜勤手当
夜勤手当も病院によってかなり違います。
夜勤一回あたりの相場は1万円という情報も散見しますが、勤務する病院の規模や地域、急患の多さ、2交代制か3交代制か…などにも左右されます。
2交替制は日勤と夜勤、3交替制は日勤・準夜勤・深夜勤となりますが、2交替制のほうが当然夜勤の時間は長く、夜勤手当も高くなります。
3交替制の場合、一般的に準夜勤より深夜勤のほうが手当の金額は高くなります。
さらに、病院では看護を必要とする入院患者数や急患の多さなどで変わるでしょう。
一方介護施設では、夜勤帯の医療処置頻度が高い施設や手のかかる入所者が多い施設などで手当が高くなる傾向にあるようです。
夜勤手当は安いところで数千円から、高いところでは夜勤一回3万円以上のところもあるといいます。
また、正職員で基本給が高めの病院などでは、正職員の夜勤手当の額と夜勤パートの一回の夜勤手当の差額が大きいところもあります。
いずれにしても、夜勤手当が高い=それなりに業務がきつい、という認識を持ったほうがよいでしょう。
※人事院『平成29年国家公務員給与等実態調査の結果』
●役職手当
役職手当も運営母体や病院の規模などによります。
参考までに役職別の平均給与額をご紹介します(※)。
<職種> <平均年齢> <平均給与月額>
総師長 55.5歳 535,052円
看護師長 47.0歳 430,669円
看護師 37.7歳 350,669円
准看護師 45.1歳 298,911円
※人事院『民間給与の実態(平成27年職種別民間給与実態調査の結果』
看護師、主任看護師、看護師長、総師長(看護部長)と昇格すれば、役職手当がつき給料も上がります。
まずは基礎的な医学知識や看護のことを臨床で学び経験を積んで、やがては管理職に進みます。
管理職になるとスタッフの教育や人事管理など管理業務をメインに担当し、夜勤の回数は減って給料もアップします。
なかには管理職の試験を設けている病院もあります。
資格で違う看護師の給料
看護師資格には正看護師(法律上の表記は「看護師」)と准看護師の2種類があります。
ただし、法律上は立場の違いが設けられているものの、実際臨床の場で明確な差異はなく、ほぼ同様の業務をこなしています。
しかしながら、給与や昇格の面では明らかな違いがあります。
准看護師は正看護師に比べて初任給も低く、通常は看護師長などの責任者には昇格できません。
求人状況をみると、准看護師は安い賃金で雇用できるという点から、診療所や個人病院、特別養護老人ホームなど広く募集されています。
給料を上げる方法
同じ看護師として就職しても、看護学校卒業より看護大学卒業のほうが基本給は高く設定され、昇給率もボーナスも高くなります。
病院や病棟にもよりますので必ず給料が上がるとは言い切れませんが、看護師として何年か勤務した後、専門看護師や認定看護師の資格を取得してスキルアップする道もあります。
また、資格を取らなくても、手術室やICU、CCU、救命救急、人口透析など、何かに特化した看護師の知識やスキルを得て、その分野のエキスパートになる、という方法も考えられます。
特定の分野に精通し即戦力として認められるような業務経験を積んでいれば、転職の際も強みとなり、基本給や手当に加算される可能性もあるでしょう。
看護師の給料と景気の関係
看護師が次の就職先に困るようなことは、基本的にありません。
世の中景気が悪くなると、就職難や給料カットなどのマイナス面が出てくるものですが、看護師はあまり影響を受けない傾向にあります。
パートや派遣で働く場合も他の職種より時給は高く、求人も途絶えません。
また、一般の職種は40代、50代と年齢を重ねるにつれ転職は厳しくなりますが、看護師は大丈夫です。
選択の幅は狭まるものの、70代でも就職先はあり資格と経験は一生活かせます。
そして、不景気でも患者数は減りませんから、給料も減ることはなく安定した職業と言えるでしょう。
看護師の給料:まとめ
- 他職種と比べ、看護師の給料は高めだが、これには夜勤手当が大きく影響する
- 看護師の給料は経営母体や病院の規模により差がある
- 経験年数が増えると40~50代くらいまでは昇給が望める
- 基本給のほかに諸手当がつくが、金額は病院により差がある
- 看護師には2種類の資格があり、給料や昇格に差がある
- 看護師は景気の影響に左右されずに安定した給料をもらえる
看護師の年収に関する情報を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
<執筆者プロフィール>
赤尾治子(あかお・はるこ)
横浜市大医学部病院に14年間勤務。介護老人保健施設に6年間勤務。株式会社 とらうべ ではお客様相談室特別対応、学校や企業の保健業務、介護施設紹介などの業務を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供