看護師にとっての結婚と仕事の関係
投稿日: 2019年01月30日
最終更新日: 2023年11月27日
執筆:青井 梨花(助産師・看護師)
結婚はライフサイクルの中でも大きな転換点ですが、夜勤などがあって勤務形態が不規則な看護師にとって、結婚と仕事の両立は大きなテーマです。
結婚後の働き方にはどのような変化が生じるのでしょう。
また、看護師の仕事と家庭生活を両立するためにはどんなことに気をつけたらよいのか、お話ししていきましょう。
このページの目次
みんなはどう? 看護師が結婚してからの働き方
結婚は看護師にとっても一大ライフイベントです。
仕事がハードなだけに、家庭との両立は大きな課題と感じられることでしょう。
看護師であるあなたは、結婚と仕事について実際にどんな悩みを持っているのでしょうか。
筆者の周りから聞いてきた事例をいくつかご紹介しましょう。
「外科病棟に勤務して3年目。来年、付き合っている彼と結婚予定。結婚後の家庭生活では、家事もこなして彼を支えていきたい。でも、看護師も続けたい。子どもも欲しいし…。実際両立できるのか?不安です」
「これから結婚する彼は会社員で土日休み。2交代制の病棟勤務で夜勤もこなしている看護師の私とは、生活リズムが基本的に合わない。彼は仕事を続けていいよと言ってくれるけれど、彼に合わせて外来勤務のできるところに転職しようか悩む。月1回当直があるけれど、平日は日勤のみで帰れるし、ほぼカレンダーどおりに休めるし…。」
「結婚したら、家のこともやらないといけないし、夜勤もしながらの仕事も30歳を過ぎてつらくなってきた。一旦、退職も考えるけれど、彼は年下。正直、自分の方が給料が良いため、夜勤しながら看護師を続けるべきなのか悩みます」
「お付き合いしている彼とそろそろ結婚を考えていますが、今の病棟は人間関係もよく、このまま続けたいと考えています。でも、彼は私が仕事することにあまり賛成じゃないみたい…。どう説得しようか悩んでいます」
夜勤があることも多く生活のリズムが変則的なため、パートナーと時間が合うかどうかを気にする人は多いのかもしれません。
また、給料や人間関係を考えるとこのまま続けたい気持ちもあるけれど、パートナーが何と言うか気になるというのもありました。
結婚後の家庭生活や働き方について、選択に迷うのは自然なことです。
それに、結婚と仕事の関係についてじっくりと考えることは、将来のライフプランやキャリアについて向き合うよい機会になるとも言えるでしょう。
まずは、看護師としての働き方について考えるために、どのような選択肢があるのかを整理してみましょう。
結婚後の働き方… 3つの選択肢
結婚後、看護師としての働き方については、大きく分けて次のように3つの選択肢があるでしょう。
1. 現状のまま仕事を続ける
2. 結婚を機に仕事をやめる
3. 転職や勤務形態を変えるなどして看護師の仕事を続ける
それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
1. 結婚後も現状のまま仕事を続ける
《メリット》
- 職場でベテランになり、仕事に自信がもてる
- 経済的に余裕ができる
- 社会的な信用や保証も継続される
《デメリット》
- パートナーとの時間が取りにくい、すれ違いが多くなりがち
- 仕事と家事の両立が課題
昨今、女性の社会進出が国の施策としても進められており、一般的に見ても、結婚後も仕事を続ける女性は多いと言えるでしょう。
もちろん看護師も例外ではありません。
看護師が結婚後も仕事を続ける選択をしたときメリットとなることは、まず、経済面で余裕を持つことができるという点です。
看護師の給与は、一般企業で勤務する同世代の女性と比べると高水準であると言えます。
それは、基本給が比較的高いというわけではなく、夜勤を含むシフトで常勤の仕事をすることで、諸手当などを多く得られるからです。
ですから、結婚後も夫婦2人で働いていたら、経済的に余裕を持てる収入となるでしょう。また、常勤であれば保険や年金など社会的な信用や保証も継続されます。
それから、結婚後の新生活と仕事との両立は、そのリズムに乗るまでに意外と時間もかかるものです。
結婚と同時期に仕事も変わるなど変化があったとしたら、慣れるまでは心身ともに大変かもしれません。
その点で、結婚後もすでに人間関係が構築されている慣れ親しんだ場所で仕事を続けることにはメリットがあるでしょう。
一方で、今の職場に何かしらの不満があって、結婚後も勤務を継続していくのは厳しい、辞めたいと感じている場合には、結婚を機にどうするか向き合うことが必要となるでしょう。
また、日勤・夜勤とシフト制で仕事を継続すると、パートナーと2人の時間が取りづらいことや、家事との両立の難しさに悩む看護師もいると聞きます。
特にパートナーがカレンダーどおりの日中の勤務の人の場合には、朝食や夕食を一緒に取れないことも多く、休みの日もお互いバラバラになってしまってすれ違いの多い生活になることが考えられます。
2. 結婚を機に仕事をやめる
《メリット》
- パートナーとの時間が増える
- 家事をしっかり行うことができ、自由な時間も多く持てる
《デメリット》
- 世帯としての収入が減る
- 看護師としてブランクが出来てしまう、キャリアがつめない
パートナーと過ごす時間を優先したいと、結婚を機に仕事をやめるという選択肢もあるでしょう。
ワーク・ライフ・バランスを考えれば、ゆったりとした時間をパートナーと共有することを望むのは当然のことでしょう。
ただし、その選択によって仕事による心身のストレスから解放される一方で、看護師としての充実感や達成感を得ることができなくなってしまうことは否めません。
また、大きなデメリットは、あなたの収入がなくなることです。結婚後も金銭的に生活にゆとりがもてるのかどうかをよく考えてみましょう。
結婚後の妊娠・出産・子育てなどを見据えたときのライフプランについて、パートナーと話し合っておく必要もあるでしょう。
仕事をやめることは、看護師としてのキャリア形成が足踏み状態になるおそれもあり得ます。
しかし見方をかえれば、時間ができた分、例えば、大学院へ行ってより専門的な知識を身につけたり、看護師以外の勉強をじっくり行ったりする機会が持てるチャンスとも言えます。
結婚後、生活が少し落ち着いたところで再就職を選択する人もいます。
ブランクが心配なら、看護協会や病院による復職セミナーが実施されていますし、「ブランクOK」「ブランク歓迎」の求人も多くありますので、検討してみるとよいでしょう。
3. 転職や勤務形態を変えるなどして看護師の仕事を続ける
《メリット》
- 結婚後の夫婦の生活リズムに合った勤務体制の職場を選択して働くことができる
- 新たなスキルを習得したり、より興味深い分野を経験することができたり、看護師としてのキャリアアップにつながる
- 収入面では、ある程度キープができる
《デメリット》
- 新しい職場を探す労力が必要
- 新しい仕事や職場や部署の雰囲気、人間関係に慣れるまで、エネルギーも時間も要する
看護師の仕事は、日曜出勤や夜勤を含むシフトでの勤務に加え、深夜明けでも病棟カンファレンスや勉強会などに出席する機会も多く、なかなか私的な時間をとりにくく、パートナーとのすれ違いが多くなりがちです。
仕事を優先せざるを得ない状況が続くと、家事が思うようにできずにイライラしてパートナーに当たってしまい、ケンカに発展することも。
かといって、仕事をすっぱり辞めてしまっては収入がなくなってしまいます。
そこで、より生活に合った働き方の選択をすることで、看護師という仕事はやめずに生活とのバランスを取ることが可能になるでしょう。また、新たなキャリアを積めるという点でも、異動や転職は有効と言えます。
病棟から外来への異動や、病棟でも日勤のみの勤務に変更が可能かどうかなど、上司に相談してみるのもひとつでしょう。
転職するならば、日勤のみの仕事、土日がお休みの仕事、派遣などさまざまな働き方があるものです。
ただし、結婚に備えての準備や新生活のスタートと同時期に転職が重なると、心身ともに負担が大きくなってしまいます。
結婚までの準備期間を十分取るか、結婚後に少し落ち着いてから転職準備にとりかかるなどすると、負担も少なくてよいでしょう。
看護師生活と結婚生活を両立するために気をつけること
では、結婚後の家庭生活と看護師としての生活を両立させるためには、どんな点に気をつけたらよいでしょうか。
「職場との関係」「パートナーとの関係」に分けて、それぞれ見ていきましょう。
〇 職場との関係
・ライフサイクルに合わせて働きやすい環境か見極める
結婚や出産、子育てなど将来のライフプランを思い描いたとき、自分にとって今の職場が働きやすい環境かどうかを考えた末、より自分が働きやすい職場へ異動や転職をした、という看護師もいます。
・「ワーク・ライフ・バランスは当たり前」と思わない
結婚後の勤務について上司へ相談して、もともと在籍していた病棟で日勤のみに調整してもらったり、病棟から外来へ異動して働き方を考慮してもらったりすることもあるでしょう。
そんなとき、「将来的に子どもを産むし、こうした配慮は当たり前のこと」と簡単に思ってしまわないことが大切です。
職場から自分のワーク・ライフ・バランスについて配慮してもらったことで、その組織にはある程度の負担が生じていることになります。
個別の配慮をしてもらったことを謙虚に受けとめることは、職場の人間関係を良好に保つ秘訣であり、それを支える他のメンバーへの礼儀でもあります。
日々感謝を忘れず、自分の責任はしっかりと果たすよう心がけましょう。
〇パートナーとの関係
・お互いを思いやる気持ちを大切に
看護師生活と家庭生活とを両立させるとなると、パートナーとの生活上のすれ違いが多くなることは予想されます。
お互いの感じていることや思っていることも話し合えず、ジレンマや誤解を生んだりして、心まですれ違ってしまうなんてことは避けたいものです。
どうしてもお互い一緒に過ごせないときは、結婚前と同じように、それを自分の時間として有効に活用してみましょう。
また、タイミングが合って一緒に過ごせるときには、有意義な時間となるようお互いを尊重しあって楽しむことも必要でしょう。まめに旅行にいくとか、共通の趣味を持つとか、2人の時間を作るように意識することが大切です。
そして、こうした楽しむ時間を持つためには、仕事についての理解を得ることと同時に、日々こなしていかなければいけない家事の分担についても話し合うことが肝となってくるでしょう。
・家事分担「せめて自分のことは自分で」
看護師生活と家庭の両立をするために必要不可欠なのは、パートナーの理解と協力を得ることです。
「付き合っていたから、看護師生活がどんなものかは分かっているはず」ではなく、残業のことや、深夜明けはどのくらいまで寝ているとか、休みの日でも勉強会や病棟カンファレンスに行くことなどをきちんと伝えておきましょう。
その上で、家事をどう分担するか話し合いましょう。
夜勤で留守にしていると、パートナーにいろいろやってもらうことが増えるので、ある意味では家事を勉強してもらえるよいチャンスでもあります。
パートナーには、せめて子どもができる前に自分のことは自分でできて、管理できるようになってもらえるようにしたいものですね。
結婚は、将来のライフプランやキャリアについて見つめ直すよい機会!
結婚して働き方を変えるか、仕事をやめるか、ライフサイクルの中でも大きな岐路ですから、選択に迷うことは当然のことですし、選択に正解はありません。
結婚を機に退職し、行政の非常勤で働きながら結婚生活と看護師生活を両立したケースもあります。
異動や転職をすることで確かに収入は減りますが、夫婦の時間を大切にできることに加え、キャリアについてもよい経験ができるという面もあります。
今の職場を離れることは、病院以外で看護師が活躍できる場があることを知るチャンスでもあり、今まで知らなかった世界に出会うこともできるでしょう。
もちろん、現在の勤務を続けることで得るものが大きいという場合もあります。
結婚は、今までのキャリアを振り返り、これから先のライフプランやキャリアプランについて見つめ直す良い機会でもあります。
その時々で何を優先すべきか、何を大切にするのかをよく考え、パートナーと話し合っておくことが重要です。
看護師にとって結婚と仕事の関係は?:まとめ
- 結婚後の看護師としての働き方については、現状のまま仕事を続ける、仕事をやめる、転職や勤務形態を変えて看護師の仕事を続ける、といった3つの選択肢がある
- 結婚後の家庭生活と看護師としての生活を両立させるために気をつけることは、職場やパートナーとの関係を良好に保つために、お互い理解し協力しあうこと
- 結婚は、将来のライフプランやキャリアについて見つめ直すよい機会
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。