看護師の初任給はどれくらい? 高いの? 安いの?
投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2024年02月20日
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
看護師の給料は、一般のOLに比べ高いというイメージを持たれているかもしれません。
しかし実際に初任給を受け取った時、「あれ?想像していたよりも少ない!」と思う看護師は多いようです。
今回は看護師の初任給や給与の実態について、様々な角度から分析してみたいと思います。
このページの目次
看護師の初任給はどれくらい?
看護師は一般的に給料が高いというイメージで見られているようです。
一般企業に勤める友人から「看護師って給料が高くていいよね」とか、親世代の人たちから「看護師さんは安定しているからいいわね」なんて言われた経験はありませんか?
そんな言葉に期待をふくらませ、いざ初任給の給料明細を見てみると「あれ?思っていたより少ない…」なんてがっかりした人もいるのではないしょうか。
どうして看護師の給料は高いというイメージが定着しているのでしょうか。
それは、他職種と違い「交代勤務手当」「資格手当」「深夜勤務給」「休日手当」など各種手当が付くからです。
しかしながら、初任給の時点ではまだ夜勤や休日勤務は入っておらず、これらの手当はつかないため他の仕事と比較しても決して高いとは言えないのです。
つまり、給料が上がるのは休日勤務や夜勤に入るようになって以降、ということになります。
また、残業が多い点も給料が高くなる理由のひとつと言えます。
一方で、自分の勤務する病院が他の病院よりも給料が少ないのではないか…と気になる人もいるでしょう。
「2017年の病院実態調査」(※)結果報告によると、2018年専門卒の基本給は平均20万114円でした。
これまでは19万円台でしたが、今年から20万円を超えています。
各種手当を合わせると、給与額は平均で26万6,041円です(夜勤手当について3交代で8回、2交代で4回と想定)。
続いて、大卒の基本給は20万7,013円、各種手当を合わせると、給与は平均27万3,854円でした。
いずれも額面なので、手取りは4~5万円程度引かれた金額になります。
比較対象として大卒の社会人1年目の初任給は20万6,100円ですので、看護師とほとんど変わりません。
しかし、夜勤手当が付与されるようになると、月収は7万円近く高くなります。
みなさんの初任給はいかがでしたか?
まずは平均をご紹介しましたが、勤務する病院や施設、地域差もありますので、次項からは視点を変えて看護師の給料を考察したいと思います。
※ 日本看護協会広報部『2017年 病院看護実態調査 結果報告』より
看護師の給料は本当に高いの?
次に、他の職業と比べて看護師の給料が高いのか比較してみましょう。
平成29年の看護師の平均年収は498.6万円(平均年齢37.1歳)、平均月収は34.9万円でした(厚生労働省「賃金構造基本統計調査の統計データ」)(※)。
一方、他の職種の平均年収は以下のとおりです。
- 医師 :平均年収1,143万円、月収87.8万円(平均40.5歳)
- 薬剤師 :平均年収 518万円、月収35.9万円(平均37.6歳)
- 看護補助師 :平均年収 281万円、月収44.3万円(平均44.3歳)
- 一般事務 :平均年収 310万円、月収22.4万円(平均37.0歳)
- 高等学校教育 :平均年収 622万円、月収39.2万円(平均40.4歳)
- 百貨店店員 :平均年収 286万円、月収20.2万円(平均39.2歳)
- 栄養士 :平均年収 342万円、月収23.0万円(平均34.1歳)
- 保育士 :平均年収 327万円、月収21.6万円(平均33.9歳)
- 美容師 :平均年収 268万円、月収21.6万円(平均29.6歳)
- 歯科衛生士 :平均年収 326万円、月収23.5万円(平均32.3歳)
- 客室乗務員 :平均年収 503万円、月収36.9万円(平均34.2歳)
- 保険外交員 :平均年収 341万円、月収24.5万円(平均46.9歳)
ちなみに、厚生労働省の「平成29年 賃金構造基本統計調査」(※)を参考に抽出したという職業ランキングによると、看護師は第37位、女性のみでは第18位でした。
また、昨年の女性全体の平均年収は376.6万円、女性看護師の平均年収は479.9万円でした。
100万円ほど多い収入なのですが、それでも多くの看護師は「今の給料では安い!」と感じているようです。
そこには「人の命を預かるという重い責任を負う仕事」「長く働いても昇給がほとんどない」「きつい、汚い、危険」などの要素が影響していると思われます。
これらを考慮すると、残業代や夜勤手当等を除けば、看護師の給料が一般的な職業と変わらないことに納得し難いのかもしれません。
確かに前述の統計データが示すとおり、一般の職種と比較して高い給料なのですが、看護師が担う業務内容に見合うほど高いとはいえない…そんな感覚なのではないかと思うところです。
※ 厚生労働省『平成29年賃金構造基本統計調査』より
施設主体別にみる看護師の給料
今度はまた別の角度から、看護師の給料を比較してみましょう。
日本看護協会『看護職の給与データ(2017年版)』(※)によると、施設別の初任給と10年勤務した人の月収は以下のとおりです。
- 国立大学病院 :大卒初任給273,335円、 勤続10年 333,376円
- 公立病院 :大卒初任給273,335円、 勤続10年 336,799円
- 公的医療機関 :大卒初任給269,976円、 勤続10年 333,851円
- 社会保険関係団体:大卒初任給283,051円、 勤続10年 273,933円
- 公益法人・個人 :大卒初任給274,306円、 勤続10年 318,806円
- 医療法人・個人 :大卒初任給273,160円、 勤続10年311,125円
- その他法人等 :大卒初任給278,075円、 勤続10年331,145円
初任給が一番高いのは社会保険関係団体ですが、勤続10年で非管理職の場合、最も給料は低くなります。
看護師として同じ病院で長い期間勤務するのであれば、公立病院や地方独立行政法人の方が昇給率は良いということが読み取れます。
病床規模別にみる看護師初任給の比較
次は病床数による看護師の初任給の違いを見てみましょう。
- 99床以下 :大卒202,740円、高卒+3年課程卒 195,793円
- 100~199床:大卒205,253円、高卒+3年課程卒 198,975円
- 200~299床:大卒207,741円、高卒+3年課程卒 201,386円
- 300~399床:大卒210,234円、高卒+3年課程卒 203,142円
- 400~499床:大卒211,972円、高卒+3年課程卒 204,568円
- 500床以上 :大卒215,825円、高卒+3年課程卒 208,589円
病床数が多い病院ほど給料は高い傾向にあります。
病床数が多い、特に急性期病院では多忙を極めますから、その分給料は高くなるのでしょう。
ですから、給料を重視する、なおかつ経験も積みたい、という人には病床数が多い急性期病院をおすすめします。
一方、病床数の少ない病院は、給料は減ってしまいますが、それ以外の利点もあります。
子育てや介護などライフスタイルに合わせたさまざまな働き方ができるため、長く働きやすいのです。
プライベートな時間も大事にしたいと考える人にはこちらをおすすめします。
※日本看護協会『看護職の給与データ(2017年版)』より
都道府県別にみる看護師初任給の比較
日本看護協会が実施した「2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」(※)では、都道府県別に初任給の平均を算出しており、給料に地域差があることがわかります。
初任給の基本月給の平均が高いのは「神奈川県」「埼玉県」「東京都」「大阪府」、看護3年過程で20万5,000円以上、看護系大学卒で21万1,000円以上でした。
最も低いのは「宮崎県」で、看護3年過程で17万9,514円、看護系大学卒で18万7,720円と、都市部よりも2万円以上低くなっています。
年間にすると2万円×(12カ月+3カ月)= 30万円ですから、看護師の給料には大きな地域格差があることがわかります。
※日本看護協会『2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書』より
働き続けると給料はどのように変わるの?
看護師は、他の職種よりも新人時代の給料は比較的高いこと、また、様々な条件に左右されることがわかりました。
しかし今後、看護師の仕事を続けていくうえで、給料の変化の見通しも気がかりなところです。
実は、勤続年数による給料の上昇は、看護師の場合あまり期待できません。
長い目でみたとき、いつのまにか一般企業に勤める友人より低くなっていた、という現象もあるでしょう。
そこで、給料をアップする方法をいくつかご紹介します。
<同じ病院で働きながら給料アップを目指す>
●役職を上げる
同じ病院で給料を上げるには、役職を上げていく方法が一番の近道です。
「主任」「看護師長」「看護副部長」「看護部長」など、昇格するにつれて手当も増えます。
病院によっては主任になるまで10年ほどかかるところもありますが、同じ病院で働き続けたいと考えている人にはよい方法だと思います。
●認定・専門看護師としてスキルアップを図る
より専門的な看護を学んで知識を広げ、自身のスキルアップとともに給料を上げる方法です。
手当は数千円とさほど高くはありませんし、職場での役割が増えて忙しくはなりますが、看護について理解を深めたいと考えている人にはよい方法だと思います。
<転職をして給料アップを目指す>
●手当が多い勤務先を探す
看護師の給料のうち手当は1割以上を占めています。
つまり、手当が充実している施設ほど給料が高い傾向にあります。
さらに、病院によって大きな差が生じるのが「夜勤手当」です。
2018年の夜勤手当の平均額は、2交代制が1万999円、3交代制の準夜勤が4,149円、深夜勤が5,066円でした。
また、夜勤に入る回数も病院によって異なりますから、転職する際は夜勤手当と夜勤回数をチェックするとよいでしょう。
●都市部の私立病院で働く
前述のとおり、都道府県別でも給料に差があることが分かっています。
給料アップを重視して転職先を探すのであれば、地方より都市部のほうが給与水準は高い傾向にあります。
しかし、物価が高い分生活費もかかる、という点を留意しなければなりません。
お金も大事だけれど働きやすさも考えて
今回は看護師の給料に着目し、いくつかのデータを元に様々な角度から比較してご紹介しました。
ご覧になったみなさんはどのような感想をお持ちですか。
最後にひとつ申し上げたいのは、給料が高い病院や施設には高いなりの理由があるということ。
生きていく上でお金はもちろん大切です。
しかし、長く働き続けたいのであれば、自分のプライベートな時間や健康面も考慮して、自分の生き方にあった働き方を見つけてほしいと思います。
看護師初任給:まとめ
- 看護師の初任給は、他の職業と比べ高くはないが、夜勤等各種手当てがつくことによって高くなる
- 看護師の初任給は、施設形態、病院規模・地域・働き方によっても差がでてくる
- 看護師の給料の上昇は、他の仕事と比べるとよくないが、専門看護師や管理職になる、転職をするなど、上げる方法もある
- 仕事を続けていく上で、給料だけを重要視するのではなく、自分の健康やプライベートも考慮して、自分に合った働き方を見つけていく事が大切である
看護師の年収に関する情報を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供