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看護師のキャリアアップにつながる資格: 臨床心理士

投稿日: 2019年08月27日
最終更新日: 2023年11月27日

看護師のキャリアアップにつながる資格: 臨床心理士

 
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
医療監修:株式会社とらうべ
 
 
こころに働きかけることで治療を行う「心理療法」
 
「臨床心理士」はその専門資格の一つです。
 
活動領域は広範囲にわたり、対象は精神科など精神疾患の患者にとどまりません。
 
疾患の種類を問わず、業務上心理的問題を抱える患者と接する機会が多い看護師にとって、この資格は有益ではないでしょうか。
 

 

認定資格としての「臨床心理士」

 
「臨床心理士」は、文部科学省が認定する公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会による認定資格です。
 
同会では1988年から認定業務を始め、現在35,912名が臨床心理士として認定されています(2019年4月時点)。
 
ただし、医師や看護師、精神保健福祉士のような国家資格ではありません。
 
「臨床心理士」の認定試験を受験するには、おもに次のような要件が必要です。
 
◇ 臨床心理士養成に関する指定大学院を修了し、所定の条件を満たしている者
 
◇ 臨床心理士養成に関する専門職大学院を修了した者
 
◇ 諸外国で指定大学院と同等以上の教育歴があり、修了後、日本国内において2年以上の心理臨床経験を有する者
 
◇ 医師免許取得者で、取得後、心理臨床経験を2年以上有する者 など
 
 
ご覧のとおり、大学の上位研究機関である大学院修了が必須要件になっています。
 
大学院には、通常の心理系で臨床心理士の有資格者たる専任教員がいる「指定大学院」と、臨床心理士の養成を目的に作られた「専門職大学院」があります。
 
なおかつ、教育相談機関、心理相談機関、病院などの医療施設などにおいて、心理臨床に従事した勤務経験を問われます。
 
原則有給ですから「ボランティア」や「研修」の類は認められません。
 
また、たとえ医師免許保持者であっても、臨床心理士の資格取得には、試験に合格しなくてはなりませんので、合格基準の難易度はとても高い資格だということがわかります。
 
 

臨床心理士4つの専門業務

 
臨床心理士資格審査規程によると、臨床心理士に求められる固有の専門業務として、次の4業務が挙げられています。
 
 
● 臨床心理査定
 
観察・面接や心理テストを通じて、個々の相談依頼者(クライエント)の独自性や問題性を明らかにしつつ、こころの問題を抱える人がどのようなサポートを必要としているかアセスメント(査定)します。
 
 
● 臨床心理面接
 
さまざまな技法を用いてクライエントの心を支援します。
この過程で共感や納得、理解、再生といった心情が生まれます。
臨床心理士の仕事のなかで、メインとなる専門的行為と言われています。
 
 
● 臨床心理的地域援助
 
対象を特定の個人に限定せず、学校や職場、被災した地域などのシーンで、個々をサポートしつつコミュニティ全体に配慮した心の支援を行います。
 
 
● 調査や研究
 
自らの高度な専門性を維持・発展させるために、臨床心理的調査や事例研究など、自己研鑽が求められています。
日本心理臨床学会日本臨床心理士会などとの連携によって、さまざまな臨床心理士研修会が行われています。
 
 

臨床心理の活動領域

 
臨床心理士が活躍するフィールドは多岐にわたりますが、おもな分野は次のとおりです。
 
● 医療・保健
(病院、クリニック、保健所、精神保健福祉センター、リハビリテーション施設など)
精神疾患を専門とする診療科、ならびにそれ以外の診療科や施設における、心理テスト、心理療法、心理面接、デイケア、発達相談、健康診査など
 
● 教育
(学校内の相談室、教育センター、教育相談機関など)
生徒や学生の学業、発達、生活などへの心理的援助。
本人との面接はもとより、親や教師への面接やコンサルテーション、必要に応じて学校や他機関との橋渡し役
 
● 福祉
(児童相談所、子育て支援センター、障害者相談機関、高齢者福祉施設など)
子どもの発達や子育て、非行、障害児・者、女性相談(DV・母子生活)、高齢者など、社会福祉の幅広い領域における心理的援助
 
● 司法・矯正
(家庭裁判所、刑務所、少年院、児童自立支援施設、警察関係等の専門的な相談業務など)
社会的処遇を決定する場面で、心理的側面のテストや調査、あるいは矯正を目的とした心理面接など
 
● 労働・産業
(企業内相談室・健康管理センター、ハローワーク、障害者職業センターなど)
職業適性や就業相談、メンタルヘルス不調者への面接、職場内コンサルテーションなど
 
 
近年、文部科学省は公立学校に学校臨床心理士(スクールカウンセラー)の配置を推進しています。
 
一方で、「私設心理相談所」を開設し、クライエントから直接依頼を受け相談料をとる“開業臨床心理士”も増えてきました。
 
このように、心の問題を抱える人が多い現代社会において、臨床心理士のニーズは徐々に高まっています。
 
余談ではありますが、上記領域のほかに、非常勤のスクールカウンセラーという立場で働く方も多いようです。
 
収入面では、その人の肩書きや知名度、たとえば医師や大学教授を兼任、テレビのコメンテーター、書籍を執筆している、などの要素によって、年収はかなり高額になるとも言われています。
 
 

看護と臨床心理士

 
それでは、看護師が臨床心理士の資格を取得すると、どのような可能性が拡がるのでしょうか。
 
 
● 病院や医療機関で働いている場合
 
病院など医療機関内における臨床心理士とは、看護の「質」を高めることに資すると言えるでしょう。
 
精神科や心療内科、発達障害や終末医療などは、心の問題に取り組むエキスパートの支援を必要としている分野です。
 
実際の現場で臨床心理士の治療やケアの技法を用いることで、看護師としての技術力も高まると思います。
 
また、「こころの障害」とは直接的に関係のない他分野においても、患者の心理面をサポートすることが回復の一助となり、看護のスキルアップにもつながるでしょう。
 
医師や看護師は、非常にストレスフルかつ過酷な職場環境のなか、重い責任を感じながらハードワークをこなしています。
 
臨床心理士という視点は、そのような状況を客観的に捉え、例えば同僚などの悩みに共感し改善へと導くなど、患者のみならず、自分自身を含む医療者のメンタルケアにも貢献できると思います。
 
場合によっては、職場のストレスを軽減するためのミッションや役割を与えられるかもしれません。
 
 
● 病院以外の分野で働く場合
 
臨床心理士という「こころの問題」をケアするエキスパートであり、看護師として「からだのケア」の専門家でもあることは、心身両方の側面から適切なアプローチが可能になります。
 
医療分野以外の各方面でも、このスキルは「強み」として高い評価を得られると思います。
 
「こころのケア」が重要視される現代社会において、臨床心理士はさまざまな分野で活躍が期待されています。
 
さらに看護師の経験と実績を持っていれば、クライエント(相談依頼者)の大きな信頼と安心を得られることは間違いありません。
 
 

臨床心理士までの途は険しい

 
看護師として、こころをケアする専門家「臨床心理士」の資格を取得し、なおかつその能力を維持・向上させる…その道のりはかなりハードです。
 
まずは、要件に沿った大学院の受験からスタートになりますので、いったんは受験勉強への専念を余儀なくされます。
 
看護師をしながら臨床心理士になる、というのは非常に厳しい選択になると思いますが、通信制や夜間コースで学びながら、日中の仕事と両立して目指す人も少なからずいます。
 
つまり、資格取得と仕事の両立を図れるか否かは、その人の覚悟次第になります。
 
この先自身の看護師としてのキャリアをどのように形成するのか、真剣に考えることが最初の第一歩と言えるでしょう。
 
 

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看護師のキャリアアップにつながる資格:臨床心理士:まとめ

 

  • 臨床心理士の資格をとるためには、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が実施する試験を受験し、合格する必要がある
  •  

  • 資格試験の受験には一定の要件を満たさなければならず、指定する大学院の修了は必須となる
  •  

  • 臨床心理士の受験要件には、指定大学院か専門職大学院を修了する必要があるほか、実務経験も問われる
  •  

  • 臨床心理士に求められる固有の専門業務は、臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助、調査や研究の4つである
  •  

  • 臨床心理士の資格を活かせる分野は、病院などの医療・保健分野、学校などの教育分野、児童相談所などの福祉分野、家庭裁判所などの司法・矯正分野、企業内健康管理センターなどの労働・産業分野などが挙げられる
  •  

  • 現在は私設の心理相談所を開設し、クライエントから直接依頼を受ける開業臨床心理士も増えている
  •  

  • 働く場所や働き方、肩書きや知名度によって、給料には大きな幅がある
  •  

  • 看護師が臨床心理士の資格を持つメリットは、看護の質や技術の向上、対応力や知識の幅の拡がり、さらには、ストレスフルな職場で働く同僚をケアする、といった視点を養えることなどが挙げられる
  •  

  • 臨床心理士として看護師が病院以外の場所で働く場合、こころの専門家であると同時にからだのケアもできることが強みとなる
  •  

  • 看護師をしながら臨床心理士を目指すのは相当の覚悟と努力が必要なので、まずは今後の自身のキャリア形成をよく考えてみることから始める

 
 
<執筆者プロフィール>
山本 恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長
 
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 

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