看護師がダブルワークをするメリット・デメリット、注意すべきこと
投稿日: 2019年01月24日
最終更新日: 2023年11月27日
執筆:吉村 佑奈(保健師・看護師)
医療監修:株式会社とらうべ
ひとつの職場以外にも掛け持ちをして、ほかの職場でも働くことを一般的に「ダブルワーク」といいます。
看護師の専門性を活かして働く場所は、病院以外にも多くあります。
働き方改革推進にともない「副業を原則解禁する」というニュースも記憶に新しいのではないでしょうか。
そこで今回は、看護師がダブルワークを行うメリットやデメリット、注意すべきことなどをご説明します。
このページの目次
そもそもダブルワークの定義とは?
「ダブルワーク」という言葉をよく耳にするようになりましたが、明確な定義はあるのでしょうか。
「ダブルワーク」は「本業を持ちつつも、仕事が終わったあとの空いた時間や夜間、休日などにほかの仕事をすること」という意味で使われる場合が多いようです。
「副業」も似たような意味で使われますが、こちらは週末起業のような可能性を追う働き方も含まれる点が少し違うようです。
また、ダブルワークには「派遣やバイトを生業とする人が職場を掛け持ちして働くこと」という意味もありますが、今回は、おもに正職員として働いている人のダブルワークに絞ってお伝えします。
看護師はどのようなダブルワークが可能か?
看護師がダブルワークをする場合の雇用形態は、非常勤やパート、アルバイトなどさまざまです。
働く期間は、長期や短期、数日から一日限りの単発、短時間まで選択の幅があります。
また、業務内容も豊富で、例えば次のような仕事が挙げられます。
*夜勤業務
*イベントナース
*ツアーナース
*献血ルーム
*介護施設
*デイサービス
*訪問入浴
*訪問介護
*保健所などでの健診業務
ダブルワークに就く際は、基本的には勤務先と直接雇用契約を結びますが、紹介会社と契約を結び、勤務先を紹介してもらって働く方法もあります。
ダブルワークのメリットとは?
看護師のダブルワークにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
●空いた時間を活用して収入を増やせる
ほとんどの場合、収入を増やすことを目的にダブルワークを選ぶのではないでしょうか。
看護師のダブルワークのなかには、夜勤の単発バイトなどのように高収入を得られる仕事も多いです。
少しでも収入を増やしたい人にとっては、空いた時間を利用して稼げることは最大のメリットです。
●新たな職場環境を知り視野が広がる
看護師の資格取得後、多くの人は病院に勤務すると思います。
転職をしないで同じ病院で働き続けていると、他の病院や看護師の資格を活かせるフィールドなど、別の職場環境のことを詳しく知る機会は少ないものと考えられます。
とくに転職を考えている人にとっては、ほかの職場環境で実際に働いてみて分かる情報は、大きなメリットになるでしょう。
転職を考えていなくても、現在の職場だけでは知り得ない業務内容や働き方、環境を経験することで、自分の働き方について考える良い機会にもなります。
さらに、人との出会いや人脈の広がり、新たなコミュニティの出現可能性も、ダブルワークの魅力として挙げられるでしょう。
●自分の得意分野の活用、新たなスキルの習得
今まで培ってきた看護技術や知識を、ほかの職場でも活用できます。
異なる環境で能力を発揮できれば、自分が獲得してきたスキルの自信につながります。
また一方で、未経験の業務に携わることもあるでしょう。
そこで新たな気づきや知識を得て本業に活かし、スキルの底上げも期待できます。
たとえば、本業が病棟勤務の人は、療養中の患者の病状や生活は分かっていても、在宅での様子まで把握するのは困難です。
ダブルワークで訪問看護や訪問入浴などの業務をしていると、現在の仕事を続けながら退院後の療養の場も経験することになり、業務の知識が深まります。
このような他領域の職場での業務は、病棟内で異動があったとしてもなかなか難しい経験です。
ダブルワークは、職場の選び方によっては幅広い領域での経験が可能な働き方です。
新しい知識やスキルを身につけ、学ぶ機会を増やしたい…と考えている人にとって、とてもメリットがある働き方と言えるでしょう。
ダブルワークのデメリットとは?
とはいえ、良いことばかりではなく、次のようなデメリットが起こる可能性も否めません。
●心身の健康への影響
ダブルワークをする以上、休日や夜間など、空いた時間を使って働くことになります。
そのため、当然体力的にも精神的にも負担が増すと考えられます。
通常の勤務時間にさらなる労働が加わりますので、心身の健康への影響が懸念されます。
●本業への支障
健康面以外にも、疲労の蓄積から本業に支障が出るリスクもあります。
人の命に関わる場面も多く、身体的・精神的に疲労が蓄積されやすい看護師業務。
ただでさえ疲れているところ、無理をしてスケジュールいっぱいに仕事を詰め込むのは、自分の首を絞めるような行為です。
本業に支障が出る可能性のあるダブルワークは、極力避けるべきでしょう。
●休息やプライベートの時間がなくなる
ダブルワークをすることで、本来休息にあてられる時間も失われてしまいます。
さらに、心身の疲労回復の時間だけではなく、プライベートの時間がなくなることもデメリットとして挙げられます。
ダブルワークをする上で注意すべき点は?
求人要項でダブルワーク可としている職場がある一方、就業規則などでダブルワークを禁止するケースも見受けられます。
ダブルワークを検討する際は、現在の職場および応募先がダブルワークをどのような扱いにしているのか、事前に必ず確認しましょう。
ここでは、ダブルワークが認められていることを前提に、注意すべき点をお伝えします。
●体調管理の徹底
ダブルワークのデメリットでもお伝えしたとおり、労働時間が長くなると心身の健康に影響する可能性があるため、健康には十分配慮しなければなりません。
私たちの身体は、活動で溜まった疲労を休息によって解消し、次の活動に備えています。
休息が不十分であれば、疲労は蓄積されて健康に悪影響を及ぼしかねません。
休息をきちんと確保し、健康管理および疲労回復に努めましょう。
●労働時間の自己管理
労働者と使用者(雇い主)は労働時間について契約を結び、使用者(雇い主)は労働者の労働時間を把握しています。
しかし、ダブルワークとなると、使用者は労働者のダブルワーク先での勤務を含む、トータルの労働時間を把握することはできません。
オーバーワークになる可能性も否めませんから、ダブルワークで働く時間は自己管理して調整し健康を維持する必要があります。
それぞれの職場で責任が伴うという自覚が必要
労働者には、勤務先に対して生産性のある労働力を提供する義務があります。
本来は休むべき時間をダブルワークに充てるとなると、ひとつの職場で働く以上に疲労は蓄積されます。
そして、健康への支障だけではなく、業務効率や集中力の低下から、事故やミスなどを招く可能性も高まります。
ダブルワークを選択する以上、各勤務先に対して責任をもって労働力を提供する、という覚悟が必要です。
このように、ダブルワークをするか否かは、さまざまな点で今後の生活に大きな影響を及ぼします。
今回お伝えした、メリットやデメリット、注意することを十分に把握・理解したうえで、自分自身の目的にあった働き方を選択するようにしましょう。
看護師のダブルワーク:まとめ
- 看護師のダブルワークでは非常勤やパート、長期・短期・単発のバイトなど、さまざまな雇用形態で勤務できる職場がある
- 業務内容も、夜勤業務、イベントナース、ツアーナース、献血ルーム、介護施設、デイサービス、訪問入浴、訪問看護、健診業務など、豊富な種類がある
- ダブルワークのメリットは、空いた時間を利用して収入を増やせる、新たな職場環境を知ることができる、自分のスキルを活かせる、新たなスキルを獲得できることなど
- ダブルワークのデメリットは、心身の健康への影響、疲労による仕事への支障、プライベートの時間がなくなる、などが挙げられる
- 健康面や仕事への支障を考慮したうえで、自分の働き方にあったの選択をする必要がある
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら・ゆうな)
保健師・看護師。株式会社 とらうべ 社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当
<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供