時代を表すキーワード「健康経営」について
投稿日: 2023年01月17日
今や時代のキーワードの一つともなっている「健康経営」。あまり馴染みがないように感じる人もいるかもしれませんが、働く人の健康にかかわる大事な考え方の一つです。そこで今回は、健康経営についてお話します。
「健康経営」の定義と提唱の背景
健康経営研究会(特定非営利活動法人:岡田邦夫理事長(産業医))によると、健康経営とは「企業が従業員の健康に配慮することで、経営面でも大きな成果が期待できるという立場から、従業員の健康管理や健康づくりを推進する活動」と述べられています。(参考:http://kenkokeiei.jp/whats)いわば、利益を生み出す「経営管理」と、生産性・創造性の源となる「働く人」の心身の充実とを、両立させていこうとする経営活動を指しています。
2015年頃からメディアなどで、もてはやされるようになったコトバですが、そのルーツはアメリカにあるようで、1980年代に提唱され、1991年に公刊された『The Health Company』(邦訳『ヘルシーカンパニー』ロバート・H・ローゼン著、宗像恒次監訳、1994.)が原点となっています。心理学者で経営コンサルタントでもあったローゼン博士は、従業員が経営者を信頼でき、働きやすい職場環境で、大切にしてもらえる会社を“Healthy Company”と呼びました。参考までに、そこでは次の8つの戦略が重要だと述べられています。
- 従業員に敬意を払う
- 従業員をフォローする
- 変化や変革に対応する
- 学習し続けることを重視する
- 心身の健康管理を促進する
- ブラックな職場を改善する
- 人材多様性を尊重する
- ワークライフバランスを保つ
アメリカでは30年以上も前に、こうしたことが課題として問われていたのですね。
日本における「健康経営」の広がり
日本では2000年前半に専門家が研究をはじめ、2006年に特定非営利法人健康経営研究会が設立されました。理事長の岡田医師によると、当初は限られた研究者や専門家には興味を示されたものの、企業の経営層や人事部門の関係者にはほとんど興味を持ってもらえなかったとのこと。けれども、2009年の新型インフルエンザの流行、2011年の東日本大震災、そして、少子・超高齢化といったその後の災害やトレンドが、少しづつ「健康経営」に意識を向けさせるところとなったようです。そして、2015年には「ストレスチェック制度」が義務化されました。そんなことから健康経営が今、時代のキーワードの一つともなっているようです。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン