五臓六腑とはどこのこと?
投稿日: 2023年05月31日
「五臓六腑にしみわたる」という表現を聞いたことがある人は多いでしょう。なんとなく身体全体にしみわたる、という意味合いのような印象がありますが、そもそも五臓六腑とは、どこを指すのか、解説していきましょう。
五臓六腑とは
五臓六腑は、東洋医学の考え方に由来していて、「五臓」とは、肝、心、脾、肺、腎の5つの臓器を、「六腑」とは、胆、小腸、胃、大腸、膀胱、三焦(さんしょう)の6つを指します。詳しくみていきましょう。
〇 五臓
・肝:血液を貯える、血液の量を調節する、新陳代謝を行う、情緒を安定させる、全身に栄養を送るなど
・心:血液の循環にかかわる、意識、睡眠や覚醒、思考活動、精神の調節をする
・脾:食物の消化・吸収を行う、血液を作る、皮膚機能を調節する
・肺:呼吸や免疫システム、体液の調節などにかかわる
・腎:水分代謝、生殖器系の機能、成長や発育の機能などに関わる
〇 六腑
・胆:胆汁をためる、排泄をおこなう、判断力や行動力などにかかわる
・小腸:胃で吸収された食物の栄養分を脾に送る。残りは、大腸と膀胱へ送る
・胃:食べ物を消化し、腸に送る
・大腸:小腸から送られる食べものの残りかすを体外に排出する
・膀胱:小腸から送られる不要な水分を貯蔵し、体外に排出する
・三焦:水分や血液を全身にめぐらせる。尿や便を排出させる水路のような機能もある。現代医学(西洋医学)でいうと、リンパ系と考えられるが、実際に特定の臓器を指すものではない
五臓六腑は臓器と同じ意味?
東洋医学による五臓六腑は、現代医学における臓器と似た働きをするものもあります。たとえば、五臓の肝は肝臓を、心は心臓と似た働きを持ちます。ただし、東洋医学では、臓器としての働きだけでなく、情緒の安定や精神の調節にもこれらが関わっていると考えていて、より広い捉え方をしているのが、特徴です。そのため、現代医学における臓器を、そのまま東洋医学に当てはめるべきではない、という意見もあります。
ところで、「五臓六腑」という四字熟語で使われるときには、身体のどこかの臓器だけを指すのではなく、「身体の中すべて」や「内蔵の総称」という意味で使われることが一般的です。「五臓六腑にしみわたる」という慣用句も、感情を表現するときや、おいしいものを食べたり、飲んだりしたときに、その感激が全身に行き渡る様子をあらわすために使われます。たとえば、「素敵な歌声が五臓六腑に響き渡る」や、「この料理は五臓六腑にしみわたるおいしさだ」というような表現です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン