小さな子どもの水分補給 何をあげるのがいいの?
投稿日: 2023年06月09日
暑くなってくると、熱中症に関するニュースを耳にする機会が増えてきますね。小さいお子さんがいると、熱中症にならないようにと、意識して子どもに水分補給をさせるかたも多いでしょう。水分補給時の飲みものとしてよく「イオン飲料」や、乳幼児用の「ベビー用イオン飲料」を見かけますね。「イオンが摂取できるなんて、なんだか身体に良さそう」「ベビー用なら赤ちゃんにあげた方がいいのでは」と思っているかたもいるかもしれません。でも実は、イオン飲料の摂りすぎには健康リスクが潜んでいます。そこで今回は、小さいお子さんがいる方は知っておきたい水分補給の方法についてご紹介します。
イオン飲料の摂りすぎはよくない?
イオン飲料は、ナトリウムやカリウムなど身体に必要な電解質を含む飲料で、飲みやすいように糖質を多く含んでいます。乳幼児用は薄く調整されているものの、糖質を含んでいて甘みのある清涼飲料水です。そのため、イオン飲料を飲みすぎると、糖質の摂りすぎや虫歯のリスクといった悪影響が懸念されます。また近年、イオン飲料の過度な飲み過ぎによるビタミンB1欠乏が問題視されています。
ビタミンB1欠乏症とは
ビタミンB1には、ブドウ糖をエネルギーに変換する働きがあります。市販されているイオン飲料には糖が含まれていますが、それをエネルギーに変えるビタミンB1は含まれていません。そのため、イオン飲料を摂取すると、ブドウ糖を分解するために体内のビタミンB1が使われることになります。そして、日常的にイオン飲料を大量に飲んでしまうと、体内のビタミンB1が不足してビタミンB1欠乏症を招いてしまうのです。
ビタミンB1欠乏症になると、手足のしびれやむくみ、歩きにくさなどの症状が現れる脚気(かっけ)や、意識障害などをもたらすウェルニッケ脳症などを引きおこすことがあります。これまでにも、1日に大量のイオン飲料を長期にわたって飲んでいた2歳の子どもがビタミンB1欠乏症を発症し、重症化して脳に後遺症が残ってしまったケースが報告されています。
小さい子どもの水分補給法
このような事態に陥らないためにも、お子さんに与える飲みものは、きちんと大人が選んであげましょう。離乳食が始まっていない段階では、母乳やミルクをしっかり飲ませましょう。また、離乳食が始まってからは、お水や麦茶など砂糖やカフェインが入っていない飲みものをあげます。感染症などで食事や水分を摂れないときには、経口補水液をスプーンで少量ずつ、こまめにあげましょう。経口補水液は、イオン飲料と同様に電解質を含んでいますが、糖質は抑えられています。ただ、それゆえに味を受けつけないことも。食べものや飲みものを何も受けつけず、飲みやすいイオン飲料をあげたいというときには、少量ずつこまめにあげることがポイントです。そして、1日200ml以内を目安としましょう。体調が回復したら食事をあげ、飲みものはお水やお茶に戻してくださいね。ちなみに、経口補水液を受けつけてくれない時には、味噌汁の上澄みを薄めたものもおすすめです。
過去に行われた調査によると、イオン飲料を子どもに多くあげている保護者は、そうでない保護者に比べて「イオン飲料は身体によいもの」と認識している人の割合が高かったそうです。大切なお子さんが食べたり飲んだりするものだからこそ、正しい知識を持ちたいですね。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当