この時季に気をつけたい!ノロウィルスへの感染予防対策について
投稿日: 2023年01月20日
冬に気をつけたい感染症の一つに挙げられる感染性胃腸炎。さまざまなウィルスが原因となりますが、冬のこの時季に多いのが「ノロウイルス」による胃腸炎です。非常に感染力が強いのですが、アルコール消毒の予防効果が低いことでも知られています。そこで、ノロウイルス対策についておさらいしておきましょう。
ノロウイルスにアルコール消毒が効かないワケ
ノロウィルスは11月から春ごろにかけての感染が多く、会社や学校、保育園、介護施設などで発生した場合には集団発生にもつながるため、何としてでも予防しておきたいところです。ところが、冒頭で触れたように、感染症の予防対策として今やあらゆる場所に設置されているアルコール消毒が、ノロウィルスの予防としては効果が薄いと言われています。それはどうしてでしょうか。
その答えは「エンベロープ」がないから。エンベロープとは、脂肪やタンパク質などからできている膜のことをいいます。
ウィルスを構造上から分けてみると、「エンベロープ」があるウィルスとないウィルスに分けることができます。新型コロナウィルスやインフルエンザウィルス、RSウィルスなど、約80%のウィルスがエンベロープを持っているウィルスです。
エンベロープは大部分が脂質から成っています。そのため脂質を溶かすことができるアルコールや有機溶剤(クロロホルム、エーテル、ベンゼンなど)で簡単に破壊することができます。ところが、ノロウィルスはエンベロープを持たないウィルスなのです。ですから、ノロウイルスはアルコールでは殺菌することができず、アルコールによる手指消毒では、感染を防ぐことができないのです。
では、どのように予防したらいいのでしょうか。
ノロウイルスの感染予防対策
ノロウイルスの感染予防法として、次の3つの方法が有効とされています。
次亜塩素酸ナトリウム(トイレやドアノブなどの消毒用)
ノロウィルスの予防には、次亜塩素酸ナトリウムを含む消毒剤や家庭用漂白剤が効果を発揮します。これらでトイレやドアノブなどを消毒するといいでしょう。また、ノロウィルス感染者の吐しゃ物の処理をするときには手袋やマスクをし、漂白剤につけおきした雑巾を使ってふき取れば感染のリスクは軽減されます。
手洗い
次亜塩素酸ナトリウムはノロウィルス対策として有効です。けれども、肌が荒れてしまうため手指に使用することはできません。感染予防のためには菌を洗い流す「手洗い」が重要です。ノロウィルスは細菌に比べて小さいため、手のしわや爪の間などにも深く入り込みます。手洗いをするときは、ハンドソープをよく泡立てて、指の間や手のひらのしわ、爪の間や手首などをしっかりと洗い、石鹸などが残っていないように流水でよくすすぎましょう。とくに、調理前や食事後、トイレ後の手洗いは念入りに行いましょう。
加熱・熱湯
ノロウィルスは85℃以上の熱を1分以上与えると殺菌できます。熱湯消毒できる衣類やタオルなどは熱湯で消毒しましょう。また、漂白剤などを使用するときに色落ちを心配する人もいるでしょう。色落ちさせたくない衣類は熱湯消毒をするのが効果的です。乾かすときは部屋干しよりも外干しをしたほうが感染リスクは軽減できます。
多くの人が知っているように、手洗いは新型コロナウィルス感染症やインフルエンザなど、ほかの感染症を予防する上でも有効です。アルコール消毒が一般的になり、手洗いがおろそかになってしまっている人は、今一度手洗いの方法や頻度を見直してみましょう。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当