風邪が原因で糖尿病が悪化する?「シックデイ」とは
投稿日: 2024年04月01日
「シックデイ」という言葉を聞いたことがありますか?「シックデイ」とは、糖尿病患者さんの「体調の悪い日」を指します。具体的にどういうことなのか、解説します。
シックデイとは
シックデイとは、糖尿病患者さんが風邪などをひいて、高熱が出る、おう吐や下痢をする、食欲が落ちて食事が摂れなくなるといった状態になることをいいます。このような体調不良は誰にとってもツライものですが、糖尿病を患っていると、その病状にまで影響をきたすことがあるので、よりいっそうの注意が必要になります。たとえば、ふだんは血糖コントロールがうまくいっている人でも、体調が悪化することで血糖値が急激に上がったり、食事が摂れなくなることで逆に低血糖に陥ったりすることがあります。とくに1型糖尿病(膵臓でインスリンを作っている細胞が壊れてしまうことでインスリンが作れなくなり、高血糖になってしまうタイプ)の人は、高血糖になりやすいといわれています。
体調不良が糖尿病を悪化させる理由
では、なぜこのようなことが起こってしまうのでしょうか。その理由は、私たちの身体のしくみにあります。糖尿病の有無にかかわらず、体調を崩すと、そのストレスに対抗するために、さまざまなホルモンが分泌されます。これらにはインスリンの働きを抑えて血糖値を高くする作用もあるため、糖尿病などでもともとインスリンの作用が弱い人は、その働きがさらに低下して、高血糖になりやすくなるのです。また、おう吐や下痢、食欲不振などで脱水状態に陥ると、血糖値がより上がりやすくなります。ですから、糖尿病の人が風邪や食中毒などの感染症を患った際には、いつも以上に血糖コントロールに気をつけなければならないのです。
シックディの対処法
シックデイの対処法については、あらかじめ主治医と相談しておくことがとても重要です。場合によっては、ふだん飲んでいる薬の量をコントロールしなければいけないこともあるので、その点についても事前に確認しておく必要があります。あわせて、体調が悪い時には安静にして休息をとること、水分補給をしっかり行い、消化のよい炭水化物などで栄養補給をすること、自己判断でインスリン製剤をやめないこと、可能な場合はこまめに血糖値を測定して、糖尿病が悪化しないようにチェックすることなども、大切なポイントになります。それでも体調が回復しない場合や、38℃以上の高熱が続くとき、24時間以上食事が摂れないとき、血糖値の高い状態(350mg/dL以上)が続くとき、意識の状態に変化がみられる時などは、早急に医療機関に相談することが必要です。
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社Mocosuku社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン