看護師の志望動機はどう表現したらいい?
投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2024年02月21日
執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
転職活動を始めるとき、まず履歴書を書きますね。
なかでも、志望動機は大切な項目です。
どこかから引用してきたような、ありふれた内容では熱意は伝わりません。
看護師の転職にあたっては、どのような志望理由を書くと印象がよいか考えてみましょう。
志望動機とは採用側が求めるもの
看護師の転職において志望動機を考える際は『採用側がどのような看護師を求めているか』に着目して事前のリサーチが必要です。以下に見ていきましょう。
◆その施設に適応できる人
施設(病院やクリニック、介護施設、会社など)によって、組織としての特徴があります。
事業の運営上何を大切にしているのか、経営理念や基本方針などもそれぞれ違います。
採用側は、自分たちの組織を知ろうと努める人、積極的にスタッフと関わろうとする人、組織に共感して馴染もうとする人…などを採用したいと考えています。
◆即戦力になる人
高い技術力をもっていてすぐに業務を任せられる人であれば、それに越したことはありません。
しかし、新卒や実務経験が浅い人の採用に関してはそういうわけにはいきません。
そうしたケースでは、業務を一つひとつ教え習得してもらい、徐々に広範囲の仕事を任せる、といった「成長」が後の「戦力」につながります。
ですから採用担当者は、仕事に対する意欲や勉強しようとする姿勢、コミュニケーション能力、仕事を覚える早さ…などをみています。
◆すぐに辞めない人
採用したのにすぐに辞めてしまった…これは施設にとって大変な時間と経費の損失です。
なぜなら、採用後に実施する教育・育成のための研修には経費がかかり、その期間中にも給料が発生するからです。
実際には働いていないのに先出しという形で支払っており、紹介会社が介在している場合はさらに紹介手数料のような費用も発生します。
また、新人の教育・育成担当者は、本来の業務を調整・中断するなどして時間を費やしています。
施設側からは、一度採用したら3年は働いてもらわないと採算は取れない、という話も聞こえます。
研修終了後は、担当部署に配属され今度は先輩たちが指導しますが、せっかく指導したのにすぐ辞めてしまったら、業務上支障があるだけでなく、気持ちの面でもがっかりしたり、場合によっては怒りを感じたりするでしょう。
簡単に辞めてしまうことのないよう、志望する時点で自分と施設との相性やお互いのメリットについて熟考しましょう。
このことはもちろん、転職活動をするご自身にとっても、時間と労力のロスになりますから疎かにはできません。
◆他の応募者と比較して優れた人
採用担当者は他の応募者と比較しています。
たとえ比較する応募者がいなくても、ある程度の合格ラインを設定しています。
また、いつも同じような内容の志望動機を見てうんざりしている可能性もあります。
ですから、少しでも目を惹く志望動機であれば、優位に立てるかもしれないのです。
書類選考の段階で評価が高いと、良い印象は面接にも引き継がれるはずです。
志望動機の失敗例
採用担当者は、最初は履歴書などから自分たちが必要としている人材かどうかを見極めたいと思っています。
なかでも志望動機はとても重要ですが、間違って捉えている人も多いようです。
マイナスな印象を与えてしまう志望動機の、よくある例をご紹介しましょう。
◆施設の魅力しか述べない
志望理由に多いのは「自分がこの施設に志望した動機」を書いている人です。
ともすると「志望動機」は本人が志望した動機や魅力を感じた点だと思われがちです。
しかし、本来志望動機とは「あなたを採用したらその施設にどのようなメリットがあるか」を述べることです。
志望動機を通して、採用担当者はあなたの人となりを想像します。
自分が書いた志望動機から想像される人物像を、意識して書くことが大切です。
◆受け身の姿勢である
新人の方に多い考え方かもしれませんが、「手取り足取りの指導を前提に(組織に)貢献する」という人がいます。
充実した教育体制や研修制度を活用して「勉強していきたい」という姿勢は一見謙虚に思えます。
しかしながら、採用側としては「学校ではありません、授業料を取りますよ」と捉える向きもあるようです。
「働く」とは、組織から給与を支給され、その組織や社会のために貢献するのです。
組織が求めるのは「組織に尽くしてくれる人」であることを心に留めましょう。
◆理念をそのまま良いと言う
施設のホームページなどにはスローガンや理念などが掲げられています。
志望動機にそれらを引用するのは悪くはないのですが、単に「感銘を受けた」などと感想を述べるだけでは魅力がありません。
どのように自分の心に響いたのか、また、自身の体験と関連づけて説明できれば、あなたの人物像がよりクッキリと伝わります。
「理念に共感した」で終わってしまうと、その場しのぎに聞こえてしまうかもしれません。
◆労働条件に惹かれた
給料や休暇の取りやすさなど労働条件の良さを志望動機に挙げる人は、もっとよい条件のところがあれば退職するだろうと思われがちです。
待遇面の魅力を強調して志望動機に挙げるのはNGです。
◆自分の都合と合う
自分の地元、自宅から近いなど自分の条件に都合があうという志望動機は、採用側としては「採用するメリット」として受け取れません。
自己中心的な人だと判断されてしまう恐れもあります。
◆やたらとほめちぎる
「すばらしい理念」「充実した教育制度」などとホームページに掲載している長所をほめたたえても、採用者には逆効果です。
ほめれば喜ぶ、という考えは短絡的ですから気をつけましょう。
◆文字は多いが内容が散漫で薄い
履歴書を埋めるために字数を増やし、単に話題を分散させて少しずつ書いているような記述は、中身が薄い印象を与えてしまいます。
また、キーワードを何度も引用してワンパターンに陥ることもあります。
自分なりの理解や解釈、受け止め方を盛り込み、自分の言葉で表現するとよいでしょう。
志望動機に書くべきこと
それでは、履歴書の志望動機はどのように書けばよいのでしょう。
まず、書くべき要素を挙げてみましょう。
*自分はどのような人物なのか
*自分の強み(スキル、長所など)はなんなのか
*多数ある施設からなぜここを選んだのか
*自分だからこそ施設に貢献できることはなにか
仕事に対する姿勢や、どの程度仕事ができるかなどは選考の材料となりますが、実際には面接してみないと分からないことは多々あります。
しかし、履歴書でまずは書類選考の「ふるい」にかけられますので、たとえば誤字脱字などはもってのほかです。
丁寧に書いているか、そして、文章力なども選考材料となります。
自分の書いた履歴書は念入りに推敲しましょう。
志望動機のポイント
次に、よい印象を与える志望動機のポイントを整理してみました。
◆担当者が読んで「会ってみたい」と思う
よい志望動機とは、採用担当者に「この人と是非会ってみたい」と思ってもらえるものです。
自分の特徴や魅力を踏まえ、採用に値する人間だということが分かりやすく書かれている必要があります。
◆文章表現に主体性がある
受け身の意欲ではなく、積極性や自主性を持って書くように心がけましょう。
研修を受けることについても、「教えてもらう」という立場では受け身と思われかねません。
自ら率先して勉強する、という表現にしましょう。
◆具体的に書く
志望施設の理念を踏まえ、実体験のエピソードなども絡めて具体的に書きましょう。
そうすると、採用担当者はどんな人物像かイメージしやすくなります。
◆着眼点がよい
志望先ホームページからの文言の引用はよく使われる手法です。
それはよしとして、どの部分をフォーカスするか、そして、自分の経験との関連づけがポイントです。
あなたの着眼点がその施設の「売り」と合致したら、採用担当者はグッとくるはずです。
志望動機が履歴書の中で大切な要素であることを、ご理解いただけたでしょうか。
しかし、実際に志望動機を考えていて、どうしてもうまくいかないときは、信頼できる友人に相談するのもよいのですが、転職エージェントなどを利用してアドバイスをもらう方法もおすすめします。
志望動機のまとめ
- 採用する側の視点に立ち、どのような看護師を求めているのか考える
- 施設に適応できる人、即戦力になってくれる人、すぐに辞めない人などを求めている
- 応募したら、他の応募者と比較されていることを意識する
- 自分を採用すると、その施設にどのようなメリットがあるのか明記する
- 志望動機でNGなのは、受け身の意欲、理念の受け売り、労働条件を挙げる、施設をほめちぎる、内容が散漫で薄い、などである
- 自分の人物的特徴と強み、その施設を選んだ理由、貢献できるポイントなどを書く
- よい志望動機は「面接してみたい」と思わせる内容である
- 文章表現や着眼点など自分なりに工夫する
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<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー