ギャンブル依存について
投稿日: 2024年05月15日
ギャンブル依存はアルコールや薬物など「物質依存」ではありませんが、賭け事という行為にハマってしまうので「行為依存あるいはプロセス依存」と呼ばれています。厚生労働省によればその疑いがある人は70万人以上にも及ぶと言われています。そんなギャンブル依存症についてお話します。
ギャンブルに依存してしまう理由とは
ギャンブルは人類の文明とともにあります。ギリシャ神話で賭博の神はヘルメスです。ゼウスの子で翼の生えたサンダルで有名ですね。ギャンブルは運に支配され、昔は神に支配されることと同義でした。ヘルメスは旅と交易の神でもあります。昔の人にとって旅による交易も、うまくいけば莫大な富を、失敗すれば無一文にと、まさにギャンブルの一種だったのでしょう。「当たるか当たらないかわからないが、いつかは当たる。まれに大当たりする」こんな状況に置かれたら、大当たりを求めて、行為にふけり、お金を投入し続けるのが、典型的なギャンブル性です。一定の仕事をすれば確実に報酬がもらえる場合と違って、「出るか出ないかわからない」ハイリスクが、行為をし続け次第にハマっていく誘因となります。
ギャンブル依存症の特徴
日本はギャンブル大国なのか
男性はスポーツくじ、ダイス、ブラックジャックなど戦略が必要なものを好み、女性はスロットマシン、ビンゴなど、偶然の要素が多いものを好むとのこと。性格的には恥と罪の感覚が強く、家族との親密な関係や信頼がなく、人間関係が苦手な人がハマりやすいとの見解もあります。また、アルコール依存症、喫煙、気分障害、不安障害など、心に健康問題のある人がギャンブルにのめりこみやすいとの指摘もあります。
冒頭でお伝えしたように、厚労省は疑いのある人の数を70万人としていますが、国立病院機構久里浜医療センターが公表している2017年のデータでは、ギャンブル依存が見込まれる人は成人の3.6%にのぼるとのことでした。各国のギャンブル依存症(病的賭博)有病率を見ても日本は高い数値です。これは、手軽なパチンコがあることによるのでしょう。習慣化が容易なだけに、依存傾向の人まで含めると1000万人いるとの見解もあります。誰もがハマっていく可能性がありますが、本人がギャンブル依存を認めず、家族が苦労している事例も多いので、本人だけでなく家族へのケア、あるいは、家族もいっしょに問題解決に取り組むことの重要性も指摘されています。
<執筆者プロフィール>
吉村 佑奈(よしむら ゆうな)
保健師・看護師。株式会社Mocosuku社員。某病院での看護業務を経て、現在は産業保健(働く人の健康管理)を担当