2年目の看護師が「辞めたい」と思う理由と考えるべき事
投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2024年02月21日
執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
目の前にある仕事をこなすことに精一杯で、必死で駆け抜けた1年目。
2年目になって、「仕事を辞めたい」と考える時がありませんか?
それはきっと、周りを見渡す余裕ができてきた証拠です。
勢いで辞めてしまうと後悔することも多くあります。
実際にあった事例も合わせ、立ち止まって考えるべきことについてご一緒に見ていきましょう。
現在進行形で「辞めたい」と考えている2年目さん必読です!
このページの目次
2年目の看護師は先輩看護師に相談しづらい?
学生時代を経て新人看護師として働き始めた時。
初めて社会に出て働くことに緊張したり、学校で学んできた看護とのギャップに戸惑いを感じたりすることもあったでしょう。
新人のころは、プリセプターや先輩看護師が積極的にサポートしてくれました。
しかし2年目になると後輩看護師も入ってきます。
そうすると当然、1年目のように手厚くサポートしてもらえる環境ではなくなるもの。
新たな新人さんが入って注目されるようになると、先輩から声を掛けてもらえる状況が少なくなります。
また、2年目になると一通りの仕事ができるため、任される仕事の幅が広がり難易度も高くなるでしょう。
しかし、まだまだ技術力・判断力は未熟です。
先輩が新人教育に注力している状況や、自らが一人前扱いされている状況が重なると、なかなか自ら先輩へ相談しづらいこともありますよね。
また、先輩に相談したいと思っても、「こんな初歩的なことで相談してもよいだろうか?」「自分で解決しなくてはいけないのでは?」と躊躇することもあるでしょう。
そうなれば、一人で問題を抱え込むようになり、さらに孤独感が増して、一層先輩に相談しづらくなってしまいますよね。
「仕事をやめたい」と真剣に悩むきっかけがあっても、その悩み始めの時期に先輩へ相談することもできず、最終的に退職の道を選ぶという結末にもなりかねません。
このような状況にある場合、自分で調べたり考えたりしても判断に迷うときや、悩みごとが出てきたときには、自ら先輩のもとへ出向きましょう!
看護ケアについてや仕事についての悩みなど、今、自分が置かれている状況を先輩へ伝えて相談に乗ってもらうことで、根本的な解決に辿り着けることが多いでしょう。
先輩も新人時代から難なく順調に働きつづけてきた人ばかりとは限りません。
小さなことでたくさん悩み、ときには大きな壁にぶつかり、その課題を乗り越えてきたからこそ今も先輩看護師として働きつづけているのです。
相談するときには勇気がいるかもしれませんが、普段は厳しい先輩も、後輩から悩みを相談されると快く話を聞いてくれることも多いです。
先輩としても、後輩から頼られることは嬉しいものです。
気軽に相談してみてくださいね。
先輩と話すことで悩んでいた気持ちもスッとして、前向きに働けるかもしれません。
2年目看護師は多重課題の幅が広がる
2年目になると、新人のころには受け持つことが少なかった重症度・ケア度の高い患者を受け持つことも次第に増えてきます。
また、一日の受け持ち患者数も1年目に比べると増える傾向にあり、突然の入院を受け入れることもあります。
さらに、患者のケアを行いながら新人さんをフォローする2年目看護師もいるかもしれません。
職場によっては、2年目になると病棟の係や委員会のメンバーに任命されたり、場合によってはリーダーになったりする看護師もいることでしょう。
1年目のころは受け持ち患者のケアに集中していればよかったものが、1年経つといくつもの業務や役割を抱え始める2年目が多いのです。
そして、幅広い多重課題に直面するようになると、注意していても起こりやすくなるのがインシデント。
厚生労働省から出されている統計では、インシデント発生件数が最も多い時期は1年目であり、2年目以降は減少していきます。
しかし、2年目になりプリセプターがいなくなると、自分一人で物事を判断して看護ケアすることが増えます。
判断力や技術力が未熟な2年目看護師では、ときにその判断を誤ってしまったり、方法を間違えてしまったりすることも出てくるでしょう。
重症度の高い患者を受け持つことも増えるため、インシデントの内容も新人のころと比べて重大なものになる可能性もあります。
こうしたインシデントが続いてしまうと「私は看護師に向いていないのではないか…」と考えたり、人の命を預かる仕事を続けることの責任に押しつぶされそうな気持ちになったりするときもあるでしょう。
このような気持ちが解消されないままでいると、「看護師を辞めたい」と思い始めてしまいます。
2年目看護師がより多くの、ときには突発的な多重課題に直面したときは「優先順位を考えて1日のスケジュールを組み立てること」「一人で解決できないときにはリーダーに相談し誰かにサポートを頼む」ことを心掛けることが大切です。
またインシデントを防ぐために、自分がどのようなミスをする傾向にあるのかをアセスメントしてみましょう。
たとえば、自分で判断したことに自信が持てない状況でミスしてしまうこともあるでしょう。
そのような状況でのミスが続く場合には、ケアをおこなう前に一度先輩に相談するステップを踏むことが、ミスを減らすことに役立ちます。
ほかにも、医師などから受けた指示をうっかり忘れてしまったというケースもありますね。
このような場合には初心に戻り、重要なことはメモをしておく習慣へと変えることでミスを防ぐことができます。
なかには、日勤・夜勤の連続勤務で疲れが溜まっているときにミスを起こしやすい人もいることでしょう。
このようなケースでは、勤務時間外や休日に心身を休めることを意識して生活することで身体のコンディションが整い、連続勤務中でのうっかりミスも減るでしょう。
ご紹介したように、自分がミスをしたときに「どんなミスであったか」「ミスが起きたときはどのような状況であったか」「自分の体調はどうであったか」「今後、同じようなミスを起こさないためにはどうしたらよいか」を丁寧に振り返ることが、その後同じようなミスを繰り返さないための対策です。
多重課題がありながらも滞りなく一日の仕事を終えられる日が多くなると、自然と自分自身が成長していることを実感するでしょう。
すると、看護師としての自信にもつながり、看護師でいることに心が満たされ、前向きに働ける日も増えてくることでしょう。
2年目は「病院の看護師は向いていない」と感じる時期
新人のころは目の前のことを進めることに毎日精一杯で心に余裕がなく、自分自身と向き合うことも少なかったでしょう。
しかし、職場環境や医師・師長・先輩看護師との人間関係、看護ケアに慣れてくることで、2年目になるころには自然と心に余裕が出てきます。
すると、自分自身や仕事と向き合うようになり、「看護師は天職だ」と思う人もいれば「看護師に向いていないのではないか」と思う人もいるでしょう。
2年目の看護師が「辞めたい」と思う背景には、下記のような理由をよく耳にします。
- 人の命を預かる仕事は責任が重すぎる
- 患者やその家族と関わることが負担
- 肉体労働をすることに身体が慣れない
- 夜勤をすると体調が悪くなる
なかには、「病院以外での仕事をしたい」と考える看護師もいることでしょう。
転職先の選択肢として考えられるのは、入院患者と接する環境や夜勤がない小規模病院やクリニック、介護施設や健診センター、企業や学校などです。
また、治験コーディネーターという選択肢もあるでしょう。
なかには、医療とは異なる業界への転職を考える人もいます。
病院で勤め続けることはやめたいけれど、何らかの形で看護師として働き続けたいと考えているならば、退職・転職することの決断は早まらないことをお勧めします。
というのも、病院での看護師だからこそ積める経験もあり、その経験が転職先の仕事で役立つ可能性があるからです。
一度病院の看護師から離れて時間が経ってしまうと、臨床の現場に戻るハードルが高くなります。
「病院で働いていたときに、このようなことを経験しておけばよかったな」ということも出てきます。
そこで、「この転職はもう少し先でもよいのでは?」と一度じっくりと考えて留まる時間を設けてみましょう。
また、転職先に考えている職場での看護師としての仕事内容をリサーチし、転職後の働き方をイメージしておくことも大切です。
このステップをスキップし、早まって転職することになると「こんなはずではなかった!」と想像もしていなかった状況に陥ることもあるかもしれません。
どんな職場でも、大なり小なり苦難はつきものです。
ただ目の前に立ちはだかっている苦難を避けるための転職はお勧めしません。
この先、転職先でもまた別の困難が待っている可能性もあります。その時々の困難と向き合い克服することで、人として成長できることも多いからです。
また、もし肉体労働によって体調が悪くなる場合は、日頃の生活を見直してみましょう。
ハードな勤務をこなす上では、体力をつけ体調を整えることは不可欠です。
さらに、心身のコンディションが整っていないと心にゆとりを持って患者と接することもできません。規則正しく栄養バランスを整えた食事を心がけ、適度に運動する時間を作ること、しっかりと睡眠を取り、カラダやココロを休める時間を取り入れてみましょう。
ただし、心身どちらの場合も日常生活に支障を来しているほど体調が悪い場合には、そのまま働き続けることでさらに健康状態を悪化させる可能性もあります。
一度専門の外来を受診することや、師長に相談することを検討してください。
2年目看護師は「隣の芝は青く見える」
2年目になると周りを見る余裕ができることから、学生時代の友人が別の病院で働いている話を聞いて自分の職場と比べることも出てきます。
そして、自分の職場環境は恵まれていると思うこともあれば、友人の病院のような環境で働きたいと思うこともあるかもしれません。
新たな職場の環境に慣れたり、人間関係を築いたりすることは、意外に精神的な負担が伴うものです。
1年かけてそれなりに慣れた今の職場では、自分の居場所を見つけ始めていることでしょう。
しかし新たな職場へ転職すれば、環境も人間関係も全て白紙に戻り、再出発となります。
さらに、看護師として1年働いて一通りのことができても、一人前の看護師としては未熟です。
そのような状況でしっかりとフォローしてもらえない環境へ転職することになると、新人時代よりもさらに大きな精神的負担を感じることになるでしょう。
もし、今の病院を離れて別の病院への転職を考えているのならば、2年目でもしっかりとフォローしてもらえる体制が整っている病院なのかをリサーチしておきましょう。
未熟な状態でフォローが手薄い職場へ転職してしまうと、インシデントを起こす可能性も高まります。
また、転職を一歩踏みとどまり、自分が働いている職場環境のよいところを探してみるのもおすすめです。
悪いところをおいておいて、「よいところにだけ」視点を合わせましょう。そのよいところを紙に書きだしてみるのも良いでしょう。
今の職場を離れて新たな環境で働いてみたときに初めて、「前の職場は恵まれた環境だったんだな」と感じるのもよくあることですよ。
2年目看護師はチャレンジ精神が旺盛になる
2年目になると、心に余裕をもって生活できるようになってきます。
そして、今後具体的にどのように働き続けたいかと考え始める時期でもあります。
今の病棟で長く働き続け、ひとつの専門分野を深めることを目標に認定看護師や専門看護師などの資格を目指すこともできます。
また、広く全般的な患者の看護ケアをしていきたいと考え、病棟を異動することを視野に入れている人もいるでしょう。
その他にも、将来は在宅の現場で訪問看護師として働き、ゆくゆくはケアマネージャーになり訪問看護ステーションを開設したいと考えたり、予防医学に携わることを中心に地域住民や学生、会社員を対象に働くことを志したりすることもあるでしょう。
女性の場合には、結婚・出産なども見据えて将来的にどのように働いていきたいかを考え始めたりもしますね。
このように将来の働き方を模索する中で、今の職場からの異動や転職も視野に入れる場合も、新たなステップへ進む時期は慎重に検討しましょう。
将来目指す働き方のために今の職場での経験がどのように活かされるかを考え、どのくらいの時間をかけてステップを踏んでいけばよいのか計画を立てることが大切です。
また、今後キャリアアップのために転職する予定があるならば、一か所の職場である程度長く働き続けたということも、経歴として有利に働く場合があります。
「石の上にも三年」という言葉があります。
次の就職先でもすぐに辞めてしまう人ではないか、と思われるのは、得策ではありません。
やみくもに行動するのではなく、長い目で計画的にステップアップしていくことで、将来その道を歩んできたことに自信を持つこともできるでしょう。
この記事があなたの看護師キャリアの一助になれればと願うばかりです。
2年目の看護師が辞めたいと思う理由と考えるべき事:まとめ
- 2年目看護師になると先輩看護師からのサポートも手薄くなり、任される仕事の幅が広がり、難易度も高まる
- 2年目看護師は技術力・判断力が未熟である一方、自ら先輩看護師へ相談しづらい状況がある
- 2年目看護師は一人で問題を抱え込むようになって孤独感が増し、先輩に相談できない状況が生まれやすい
- 行き詰まったら自ら先輩に相談することがおすすめ
- 2年目看護師は多重課題の幅が広がり、インシデントが起こりやすくなる
- インシデントを繰り返す状態が続くと「看護師を辞めたい」と思い始めることもある
- 多重課題に直面したときは、「優先順位を考えて1日のスケジュールを組み立てること」「自分ひとりで解決できないときにはリーダーに相談し誰かにサポートを頼む」ことを心掛ける
- 自分がどのようなミスをする傾向にあるのかをアセスメントすることが、ミスを繰り返さないための対策
- 2年目看護師は「病院の看護師は向いていない」と感じる時期
- 2年目看護師は心に余裕が生まれ、周りを見渡せるようになる時期
- 2年目看護師が「看護師を辞めたい」と思う背景には、「人の命を預かる仕事は責任が重すぎる」「患者やその家族と関わることが負担」と感じることや、「肉体労働をすることに身体が慣れない」「夜勤をすると体調が悪くなる」ことなどがある
- 病院以外での転職先には、小規模病院やクリニック、介護施設や健診センター、企業や学校の看護師、治験コーディネーターなどがある
- 転職を考えるときには、転職後の働き方をイメージしておくことも大切
- 2年目看護師が別の病院へ転職する場合には、フォロー体制が整っているかリサーチする
【参考】
厚生労働省『全般コード化情報の分析について』
こちらの記事もぜひご覧ください。
看護師を辞めたい理由とは?
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン