看護師のお仕事:精神科のお仕事とは
投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2023年11月27日
執筆:青井 梨花(助産師・看護師)
昨今、うつ病など精神疾患を持った人が急増しており、それにともなって精神科の病院やクリニックも増加していることから、精神科看護のニーズはますます高まりつつあります。
ここでは、精神科への転職を考えるときに考慮したい点について見ていきましょう。
このページの目次
精神科のお仕事:精神科での看護師の仕事内容とは?
看護師が精神科外来で行う具体的な仕事内容は、基本的には一般の外来と同じです。
また、精神科病棟看護には、特徴的な業務もありますので、いくつか挙げてみましょう。
安全への配慮
自殺企図や自傷行為、他害行為などの事前予防や観察など
セルフケアの援助
病状によっては著しくセルフケア能力が低下することもあるので、病状に合わせて対応や指導を行う
服薬の管理
病状によっては援助や管理が必要な場合もある
作業療法や日常生活訓練
レクリエーションの企画や進行など
精神科のお仕事:精神科看護に必要なスキル
精神疾患を持つ多くの患者さんの特徴に、コミュニケーションをスムーズに取れないことがあります。
ですから、精神科看護においては患者さんの言動やささいな変化を見逃さない洞察力、言動から病状や気持ちを察する能力が求められます。
また、コミュニケーションをスムーズに取るためには、信頼関係がなくてはなりません。
精神疾患を持つ患者さんとは信頼関係を構築していくのに時間を要する場合が多いので、途中であきらめずに根気よく関わっていく粘り強さも必要でしょう。
また、信頼関係を構築していこうとするなかで、ときには意図せず乱暴なことばを吐かれたり、突然身体に触れられたりすることもあるかもしれません。
病気がそうさせていることが分かっていても、やるせない気持ちになったり葛藤したりすることもあるでしょう。
そんなとき、同僚や先輩とコミュニケーションを取ったり、プライベートではストレス発散できる趣味を持ったりするなど、気分を上手に切り替えていくのも精神科看護を行う上でとても大切なことです。
精神科のお仕事:精神科でもさまざまな施設がある!
精神科看護と一口に言っても、いろいろな施設で活躍の場があるのをご存知ですか?
それぞれ特徴があるので見ていきましょう。
総合病院・大学病院の精神科
精神科以外の診療科目もあるため、次のような人が受診するケースがあります。
- 精神科の患者さんで内科や外科などの病気を持っている人
- 症状が精神的な病気からきているのか、他の身体的な病気が原因なのか精査が必要な人
- 内科や外科などにかかっていて、精神症状のある人
このように、総合病院などでは他科との連携が重要な役割のひとつでもあると言えます。
そのため、転職する場合は精神科看護が未経験でも、一般診療科の経験があることはプラスに評価されます。
また、総合病院や大学病院は教育制度が充実していることが多く、研修がしっかり受けられるのでキャリアアップも可能でしょう。
経験者優先で採用されたりすることも多いですが、その一方で、特に大学病院は、未経験者としては、新卒採用がメインのところが多いようです。
また、希望を出しても、総合病院・大学病院ゆえに、必ず精神科に配属されるとも限りませんので注意が必要です。
入院病棟がある病院では、その病棟配属になれば夜勤もあります。
また、外来のみを設置している総合病院・大学病院では、外来当直が回ってくるところもありますが、基本的には日勤となります。
精神科の専門病院
精神科の専門病院には、急性期~慢性期にかけて一貫して対応するため、入院病棟(閉鎖病棟・開放病棟)、外来、デイケアなどがあります。
こうした専門病院ならではの特性から、同じ精神科内でも勤務場所の選択肢の幅が広いことが特徴です。
また、勤務形態も4週8休で夜勤のあるものから、夜勤なしで日勤のみ、さらには常勤もしくはパートまでさまざまです。
精神科看護師としてワーク・ライフ・バランスを取りながらキャリアを積むには適している施設と言えます。
採用にあたって年齢制限がなかったり、未経験やブランクのある人への求人があったりすることも多いようです。
急性期の病棟では急変などがあり得ますから、注射など医療処置の機会も多いと言えるでしょう。
慢性期病棟は経過を長く看ることになるので、コミュニケーション能力を生かして患者さんとじっくり関われる機会が多いですから、精神看護のスキルをアップしたい人にはおすすめです。
クリニック
入院施設がないので、比較的症状の軽い、また落ち着いている患者が通院する場所になります。
ですから医療処置は少なく、精神科未経験やブランクでもOKという求人も比較的多いでしょう。
もちろん夜勤はありませんし、残業も少なめと言えます。
ただ一方で、精神疾患を有しながら仕事をする人が仕事帰りに受診することができるように、平日遅くまで受付していたり、土曜午後や日曜も診察していたりするクリニックもあります。
その場合は、シフト制を組んでいるところもあります。
ここ数年の傾向として、休職中の患者さんに対して復職に備えるための治療プログラムを行えるよう、クリニックでデイケアを併設しているところも増えています。
その担当看護師として働くケースもあるでしょう。
クリニックもワーク・ライフ・バランスを取りやすい職場と言えます。
とはいえ、クリニックは看護師の採用人数がもともと少ないので、急なお休みなどに柔軟に対応してもらえるかなど、事前によく確認しておくことも大切です。
訪問看護
近年、統合失調症や妄想性障害、気分障害などを持つ患者さんにも対応できるよう、精神科を専門とする訪問看護ステーションも増加傾向にあります。
さまざまな精神疾患を抱えながら、できるだけ自立していけるようにケアをするというのが、精神科訪問看護師に期待される役割です。
身体的な管理はほとんどないと言っていいでしょう。
主な業務には、生活リズムを整えるためのサポート、復学や就職など社会復帰へ向けてのサポートなどですが、病院と違ってリアルに薬の効果を確認できないため、服薬管理は副作用を含めて特に重要です。
観察を十分にして主治医に報告する必要があります。
精神科看護の経験は、患者さんの気持ちを理解し、ケアしていくことが求められますから、看護師として他の科に関わるときにも役立つと言えるでしょう。
また、働く場所によっては一般急性期の病院に比べて年間休日が多く、残業も少なめです。
そうしたところはワーク・ライフ・バランスを重視する人でも働きやすいと言えるでしょう。
より専門性を追求したい人は、精神科看護の職能団体である日本精神科看護協会が指定する「精神科認定看護師」や、日本看護協会が指定する「精神看護専門看護師」の資格を取得し、リエゾンナースとなってキャリアアップを目指すということもできます。
精神科のお仕事とは:まとめ
- 最近では、うつ病など精神疾患をもつ人が急増しており、精神科の病院やクリニックも増加し、精神科看護のニーズはますます高まっている
- 精神科看護での特徴的な業務には、自殺企図のある方などに対する安全への配慮、セルフケアの援助、服薬の管理、作業療法や日常生活訓練などがある
- 精神科看護に必要なスキルは、患者の言動やささいな変化を見逃さない洞察力やコミュニケーション能力、根気よく関わっていく粘り強さ、うまく気持ちの切り替えをする能力などである
- 精神科看護を活かせる職場には、総合病院・大学病院の病棟や外来、精神科の専門病院、精神科のクリニック、訪問看護などがある
- 他の科に関わるときにも、精神科看護の経験は大いに役立つと言える
- 一般急性期の病院に比べて年間休日が多く残業も少なめの施設は、ワーク・ライフ・バランス重視の人にも働きやすいといえる
- より専門性を追求したい人は、「精神科認定看護師」や「精神看護専門看護師」の資格を取得し、リエゾンナースとなってキャリアアップを目指すこともできる
<執筆者プロフィール>
青井 梨花(あおい・りか)
助産師・看護師・タッチケアトレーナー
株式会社 とらうべ 社員。病院や地域の保健センターなど、さまざまな機関での勤務経験があるベテラン助産師。
現在は、育児やカラダの悩みを抱える女性たちの相談に応じている。プライベートでは一児の母。