看護師のお仕事:専門看護師のお仕事とは
投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2023年11月27日
執筆:座波 朝香(助産師・保健師・看護師)
看護師として専門性をより高めるためには何ができるでしょう?
「看護師としてのキャリア、これからどうしよう」と考えたときに、「専門看護師」という言葉を思い浮かべる人がいると思います。
しかしこの専門看護師、いったいどういう存在なのか、よく分からないということもあるでしょう。
ここでは、専門看護師となんなのか、またその仕事について紹介ていきます。
このページの目次
専門看護師ってどんな人?どういう資格?
専門看護師とは、簡単にいえば「看護師の国家資格を持った専門職の中でも、ある分野に特化したさらなるスペシャリスト」のことです。
「専門看護師」というのは、日本看護協会が運営する専門看護師制度に則って得られる認定資格です。
この資格を得るには、まず看護師経験が5年以上あることが前提となります。
その上で大学院に入り、必要な単位を取って修士課程を修了し、さらに認定審査をパスすることで、この専門看護師資格が取得できることになります。
もともと看護職は研修会や学会への参加も多く、新しい知識を取り入れて日々ブラッシュアップしている方が多いですね。
専門看護師はさらに、看護や研修、研究などの実績について書類審査を受けることで、その資格を5年ごとに更新して専門性を保つことができます。
専門看護師とそうでない看護職の働き方の違いは?
2017年現在、2,000人あまりの専門看護師が全国で活動しているそうです。
専門看護師でない看護師と同様に、病院に所属していることがもっとも多く、具体的には2,104名の専門看護師のうち1,734名が病院の所属です。
さらに、病院の中でも専門看護師の半数近くが「病棟」にいます。
そのほか、専門看護師がいるのは多い順に「看護管理部」「外来」「ICU、CCU、HCU等」となっています。
とはいえ、「専門看護師と一緒に働いたことがない」という方もいるでしょう。
いまいち、その資格がどのように生かされているのかイメージが湧かないかもしれません。そこで、専門看護師がどのような業務を行っているのか紹介しましょう。
専門看護師には、「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」という6つの役割が求められ、所属する組織の中でこれらに沿った活動を行います。
たとえば、以下のような仕事があります。
- 院内外において専門分野についての研修会の講師をする
- 院内の看護師やその他の医療職種からの相談を受ける
- 院内でよりよいケアを提供するためのワーキンググループを立ち上げ、専門看護師以外のメンバーと一緒に活動する
- 研究および学会発表をする
専門看護師はどういう分野があり、どんな活躍ができる?
専門看護師には広く深い知識や技術が必要とされます。
2017年6月現在、専門看護分野としては、以下の13分野があります。
- がん看護
- 精神看護
- 地域看護
- 老人看護
- 小児看護
- 母性看護
- 慢性疾患看護
- 急性・重症患者看護
- 感染症看護
- 家族支援
- 在宅看護
- 遺伝看護
- 災害看護
ここでは、いくつかの専門分野を取り上げて、どんな活動をしているのかを紹介します。
がん看護専門看護師
医療の発展によって、がん治療の選択肢が広がり、生存率も高くなっています。
そのため、必ずしも「がん=死」を意味するものではなくなってきています。
それだけに、治療をしながら働いたり、後遺症を抱えて生活したりする患者さんも多く、がん発症後の人生を歩んでいく中での悩みはとても複雑です。
たとえば、再発や転移への不安や死への恐怖など、精神的な負担は大きいものです。
がんの患者さんはそうした不安を抱えながら、病状や自分の生き方にあった治療を理解して選択してかなくてはなりません。
そこで、がん看護専門看護師は、患者さんやその家族からの相談を受けています。
そのほか、ともに働くさまざまな職種の人からも相談を受けたり、チームで患者をバックアップしたりするための調整役としても働いています。
母性看護専門看護師
突発的なことが起こりうる周産期医療では、予期せずに妊婦や赤ちゃんに病気が見つかったり、合併症が起こったりすることも珍しくありません。
たとえば、赤ちゃんが生まれてすぐに別の病院に搬送される事態になったときなどは、NICUや産科病棟などに勤務する専門看護師が、母親や家族に対して状況が理解できるように説明したり、心理的なサポートをしたりします。
また、退院後も安心して地域で生活できるように、行政医療職や、場合によっては在宅医療との連携をするなど、継続的な看護が必要な場面でも調整役として働きます。
遺伝看護専門看護師
この分野は2016年に新しく設けられたもので、2017年の審査で初めての認定者が出ています。
年々、遺伝性の病気についての検査や診断、治療がより具体的に行われるようになり、遺伝子を読み解く技術には期待が高まっています。
その一方で、「遺伝」に対する正しい理解はあまり進んでいないと言えるでしょう。
たとえば、出生前診断の技術があることで「出生前診断をすべきか」「検査をして遺伝性の病気が見つかったらどうしたらいいのか」と迷う人もいます。
また、自分や家族に遺伝的な病気があることで、子どもは欲しいが周りに反対されるなど、リプロダクションの課題もあります。
遺伝看護専門看護師はそういったときに、産科の外来や相談窓口で遺伝についての相談を受けることなどが想定され、これからの活躍に期待されています。
災害看護専門看護師
この分野も、2016年に新しく設定されて2017年の診査で認定者が出ています。
大きな災害が頻発するなかで、発災時の直接的な健康被害だけではなく、長期的な影響が及んでいます。
災害看護専門看護師は、災害基幹病院や災害拠点病院の救援体制の構築に関わるといった発災時の救援体制だけでなく、災害サイクル全体を通じて活動する看護師です。
たとえば、在宅医療が必要な患者や妊産婦、障害のある人など、特別なサポートが必要な人たちがその後も適切にケアを受けられるよう働きかける役割を期待されています。
このように、専門看護師はそれまで培ってきた看護師としての経験を土台として、より専門的な分野に関するエキスパートとなることが求められます。
さらには、自らの専門分野に関わる他分野の職種の人たちとどのように連携していくかを考えることのできる、広い視野を持つことも必要と言えるでしょう。
まとめ:専門看護師の仕事
- 専門看護師は、専門の分野について広く深く学んだ専門家の中の専門家
- 5年以上の看護師経験があり、修士課程を経て認定審査を受けることで資格を得る
- 資格を得たあとも5年ごとに更新が必要である
- 専門看護師の仕事に求められるのは「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」の6つの役割
- 2017年現在2104名の専門看護師がいて、病院に勤めていることが最も多い
- 現在13の分野があり、分野ごとに活躍する現場はさまざま
- がん看護専門看護師は、がん治療法の選択肢が広がり生存率が高まるなかで、がん患者の相談を受けたり、さまざまな職種が連携してサポートするための調整をしたりする
- 母性看護専門看護師は、NICUや産科病棟にいて母親や家族のサポートをしたり、ときには行政医療職や在宅医療との連携の調整をしたりもする
- 遺伝看護専門看護師は2016年に新設され、遺伝についての研究や治療技術が進むなかで、一般の人たちの遺伝に関する相談を受けるなどすることが期待される
- 災害看護専門看護師も2016年に新設され、発災時の救援体制の構築に関わるだけでなく、その後も支援が必要な人たちへのサポートをするなど、災害サイクル全体を通して活動することが期待される
- 専門看護師は、自分の専門分野に関わる他分野の人たちとどのように連携していくかという広い視野も持つことが必要
【参考】
・日本看護協会『資格認定制度 専門看護師・認定看護師・認定看護管理者』
・日本看護協会『初の遺伝看護専門看護師・災害看護専門看護師 誕生』
<執筆者プロフィール>
座波 朝香(ざは・あさか)
助産師・保健師・看護師。大手病院産婦人科勤務を経て、株式会社とらうべ社員。育児相談や妊婦・産婦指導に精通