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看護師の仕事:緩和ケアのお仕事とは

投稿日: 2018年09月03日
最終更新日: 2023年11月27日

看護師の仕事:緩和ケアのお仕事とは

 
執筆:井上 愛子(保健師・助産師・看護師)
 
 

重い病気を患っている人やその家族は、心身ともにさまざまなつらさを抱えています。

 
その苦痛を和らげ、その人らしく過ごせるように支援するのが緩和ケアです。
 
これに携わる看護師には、「ひとりの人と、どのように向き合うのか」というプロとしての心構えが大切になってきます。
 
 

緩和ケアとは

 
「緩和ケア」という言葉からは、一般的に「ターミナル期にあるがん患者へのケア」がイメージされがちです。
 
でも、緩和ケアは本来、それだけを意味するのではありません。

 

特定非営利活動法人 日本緩和医療学会では、「重い病を抱える患者やその家族一人一人の身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケア」と定義しています。
 
たとえば、がんといった重い病気と診断されたとき、本人や家族は少なからずショックを受けます。

 
仮に自覚症状はまだなくても、不安や気分の落ち込みから食欲が落ちたり眠れなくなったり、また、病気の進行にともなって痛みや吐き気などの症状が出たりと、その時々の状況によって多くの困難と向き合うことになります。
 
そのような状況にあっても、できる限り苦痛を減らし、本人と家族が現状を受け止めて、その人らしく毎日の生活を過ごせるよう支援することが、緩和ケアに求められているのです。
 
 

緩和ケアの力が必要とされる医療現場

 
緩和ケアの手法が必要とされているのは専門の病棟だけではありません。
 
厚生労働省において平成18年に制定された『がん対策推進基本計画』では、「早期からの疼痛緩和」「在宅での支援体制」など緩和ケアに関する項目が盛り込まれました。
 
がんと診断されても治療を受けながら仕事を続けたい、病状が進んでも最期まで自宅で過ごしたいなど、患者さんはそれぞれの願いを持っています。
 
そのような思いを叶えるために、外来や入院病棟、在宅などさまざまな場がネットワークによって結ばれ、切れ目なく緩和ケアが提供されることが求められています。

 
ただし現状ですと、そのようなネットワークは十分に整っているとは言えません。
 
まだ多くの医療機関がそのあり方を模索している黎明期にあります。
 
そんな中で、早くから緩和ケアに特化した場での経験を積んでおくことは、看護師としての質を高めることになるでしょう。
 
 

緩和ケアのお仕事:入院病棟での緩和ケア

 
ここからは特に、緩和ケアを重点的に学べる医療現場について説明していきましょう。
 
まず、全国には厚生労働省によって「がん診療連携拠点病院」に指定された病院が401か所、「地域がん診療病院」に指定された病院が36か所あります(平成30年4月時点)。
 
このような医療機関には多くの場合、緩和ケアを提供する体制が整えられています。

 
たとえば、がんなど重い病気を持つ人が入院するのは「緩和ケア専門病棟」だけでなく、消化器内科、呼吸器外科など、病気の部位やその治療目的に合わせてさまざまです。
 
指定病院ではそれぞれの病棟でも緩和ケアが提供できるよう、日々スタッフが勉強を重ねているのはもちろんのこと、病院に専門の緩和ケアチームを置き、各病棟を訪問しているところも少なくありません。
 
緩和ケアチームには、医師や緩和ケアを専門とする看護師、薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーなどが所属し、個別の状況やつらさ、抱える悩みなどに応じて診療を行います。
 
また、担当医や病棟看護師とカンファレンスを行って、ケアについて検討することもあります。

 
このように、日々さまざまな患者と関わりながら、ときに専門チームとも意見を交換し緩和ケアを深められる場では、大きな学びが得られるでしょう。

 
 
また、特に身体の苦痛や心の苦しみを和らげることを目的に、専門の緩和ケア病棟を置いている病院もあります。
 
病院によっては「ホスピスケア病棟」といった名称をつけているところもあります。
 
これらは総じて、がんの根治が治療目的ではなく、心身の苦痛を緩和することを目的としている病棟とイメージしてください。
 
そのような病棟では緩和ケアについて専門知識をもったスタッフが多く、一般的な病棟と比較して特に次のような傾向があります。
 
 

身体と心の苦痛緩和に力を注ぐ

 
病気の進行にともなって患者さんが抱える困難はさまざまです。
 
身体症状として痛みや吐き気、だるさ、息苦しさなどが出たり、不安や気分の落ち込み、孤独などを感じたり、身体と心のつらさそれぞれが影響しあっていることもあります。
 
緩和ケア病棟では、薬剤などを用いた医学的なケアに限らず、一人ひとりに合わせた幅広い援助を行います。
 
 

患者や家族の意思を尊重したケア

 
医学的に必要と考えられる検査や処置を行うのではなく、患者や家族の意思を最優先とし、点滴や栄養のための管を入れるといった行為は必要最小限にとどめます。
 
 

穏やかに日常生活を送るための工夫がある

 
多くの緩和ケア病棟には、患者や家族が思い思いの時間を過ごせるよう配慮したデイルームが設けられていたり、ボランティアの協力を得て季節に合わせた行事や音楽を楽しめるよう企画されているところもあります。
 
また、ベッドから起き上がることが難しい場合でも、ストレッチャータイプのお風呂で入浴できるようにするなど、それぞれの状態に合わせて日常生活を過ごし、楽しみを持てるようにスタッフが工夫を重ねています。
 
 

家族と過ごすための配慮

 
病院によって異なりますが、面会時間の制限がなかったり、ペットとも会うことができたりするなど、一般的な病棟よりも柔軟に面会に対応しているところが多くあります。
 
また、個室の病室に家族も泊まれる設備があったり、家族が休息を取るためのスペースや、簡単なキッチンやシャワーなどを備えた部屋が整えられていたりする場合もあります。

 
 

緩和ケアのお仕事:外来や在宅での緩和ケア

 
入院している患者さんが退院するとき、引き続き病気と付き合いながら日常生活を送るためには、外来や在宅でも緩和ケアが継続されることが必要です。
 
病院によっては専門の緩和ケア外来を設け、主治医と連携をとりながら、継続的な緩和ケアを提供しているところもあります。
 
また、病気を持っていてもできるかぎり自宅での暮らしを続けたいと望む人も多く、在宅緩和ケアに力を入れている訪問看護ステーションなども増えています。
 
これから高齢化が進むことで、より医療へのニーズが高まることが予想されます。
 
医療の中心が病院ではなく在宅へとシフトする傾向が強まる中で、緩和ケアに精通しておくことは、看護師としての将来的な選択肢の拡大につながるでしょう。
 
 

緩和ケアを学び専門性を高めよう

 
ここまでお伝えしてきたように、緩和ケアは重い病気と診断されたその時からターミナル期に至るまで必要とされるものであり、その知識は緩和ケア病棟ではもちろんのこと、どのような医療現場であっても求められるものです。
 
緩和ケアのお仕事に携わり、日々、一人ひとりの人とどのように向き合うのかを自分自身に問いかけながら働くことで、看護の質と専門性が高められるでしょう。
 
 

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緩和ケアのお仕事:まとめ

 

  • 緩和ケアとは、ターミナル期にあるがん患者への看護だけを指すものではない
  •  

  • 重い病気の人やその家族が抱える心身の苦痛を和らげ、前向きに過ごせるよう支援することが緩和ケアである
  •  

  • 緩和ケアのネットワークはまだ十分に整っているとは言えず、多くの医療機関で模索状態にある
  •  

  • 専門の緩和ケアチームが各病棟を訪れる病院や、緩和ケア病棟を置いている病院もある
  •  

  • 緩和ケア病棟では、心身の苦痛を和らげられるよう、一般病棟とは異なる配慮もなされている
  •  

  • 継続的な支援のために緩和ケア外来を設けている病院や、緩和ケアに重点を置いている訪問看護ステーションもある
  •  

  • 緩和ケアのお仕事に携わることは、専門性を高め将来の選択肢を広げることに繋がる

 

【参考】
・高橋ユリカ『医療はよみがえるか ―ホスピス・緩和ケア病棟から』岩波書店
・森田達也・白土明美『エビデンスからわかる 患者と家族に届く緩和ケア』医学書院
がん情報みやぎ『緩和ケアについて知ろう』

 
<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

 

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